離婚の心理学。家族、ストレス、ライフスタイルの変化

離婚の心理学。家族、ストレス、ライフスタイルの変化

 日本では離婚率の増加が顕著であることが厚生労働省の調査でも判明しています。調査自体は約10年に1回程度ですが、最初に統計をとった1950年(昭和25年)の年間の離婚件数が83,689件であったのに対し、最新の調査年次である2008年(平成20年)では251, 136件となっており、約60年で約3倍となっています。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon10/03.html
 離婚の増加は社会的・文化的な変化による影響とも考えられますが、心理学的・精神医学的にはどのような背景があるのでしょうか。今回は、この観点から離婚について解説してみたいと思います。

目次

  1. 家族心理学 - 夫婦・家庭と心理学 –
  2. 離婚はストレス?では、結婚は?
  3. 離婚前・離婚後でメンタルはどう変わるのか?
  4. 夫婦カウンセリングとは?
  5. まとめ

【1】家族心理学 - 夫婦・家庭と心理学 –

(1)家族は“システム”という考え方

 離婚とはそもそも“結婚ありき”の事柄なのであり、結婚していない人が離婚だけするということはできません。つまり、まず“結婚”そして、“家族”というものがありきで、そこに発生する対人関係上の問題の1つの形が離婚あると捉えることができます。
心理学には家族心理学というものがあります。家族心理学は,家族カウンセリングや家族療法、家族教育などについて扱う分野であり、まず“家族とは、1つのシステムである”というシステム・アプローチという考え方を採用しています。これは結婚・離婚の場合も同様で、家族心理学では、結婚も離婚も“システム”として捉えます。結婚は“新しく2人の人間を中心としたシステムが出来上がる”ということを指します。一方で、離婚は“これまでのシステムに不具合や機能不全が生じ、システム自体が大きく変更される”ということを指します。

(2)家族関係は「直線」ではなく「円」で捉える

また、家族心理学では家族を「直線」ではなく「円」で捉えます。これを円環的因果律とよびます。まず「直線」で捉えるというのは、例えば「結婚したのは夫が妻を愛しているからだ」という考え方です。一方で円環的因果律では、以下のように家族関係を捉えます。
 ①  夫が些細なことでも、すぐに娘を大きな声で怒鳴りつける

 ②  妻は怒りの飛び火を恐れ、この状況を無視

③ 父母両方からのネガティブな態度に娘は委縮してしまう

④ 娘の委縮状態が夫の怒りを拍車させる

⑤ 娘は自分の意見を主張したり、反論したりしなくなってしまう。

⑥ 上記の娘の態度が家庭内で認められることで、夫が些細なことでも娘を怒鳴る
  (以降、①から繰り返し)

 もし、離婚が上記のような家族関係の中で起きたとしましょう。一般的には「直線的」に考えてしまうので「誰が一番悪いのか?」という犯人捜し的なアプローチになりがちです。しかし、円環的因果律では単純な「原因 ⇒ 結果」という考え方ではないので、上記の①から⑥がグルグルと回りながら繰り返されるものの、①~⑥のいずれもスタート(原因)ともなるし、ゴール(結果)ともなり得るというわけです。

離婚における心理カウンセラーの役割

 離婚については「家族の中のことだから、色々と事情があったのだろう」というニュアンスで捉えることが多いものです。これは、赤の他人かつ心理学の専門家ではないという立場から見ると、家族内の円環的因果律を理解・把握するのが難しいからだと考えられます。そこで、心理学の知見が活きてきます。家族心理学から派生した心理療法である家族療法では、心理カウンセラーが専門家として家族(夫婦)と関わることで、円環的因果律で家族(夫婦)を捉え、「メンタルへルス上の問題を最小限に抑えた離婚」というものを進めていくことが可能になるのです。

【2】離婚はストレス?では、結婚は?

 離婚はメンタルへルスの観点から考えると“マイナス”の出来事であると考えられます。これ以上ストレスを抱えたくないから結婚生活に終止符を打つ、という人も多いのではないでしょうか。では、離婚によるストレスの程度は具体的にどのくらいのものなのでしょうか?
 心理学者のホームズとレイは、様々なライフイベントにおけるストレスを数値化するという研究を実施しています。彼らは1位から43位までをリストアップしていますが、そこから上位のものを抜粋すると、以下のような内容及び「ストレス・ポイント」となります。

 1位:配偶者との死別(100ポイント)
 2位:離婚(73ポイント)
 3位:夫婦別居(65ポイント)
 4位:刑務所への収監(63ポイント)
 5位:親族との死別(63ポイント)
 6位:自分自身が怪我で重症になる・病気で重体になる(53ポイント)
 7位:結婚(50ポイント)
 8位:解雇による失業(47ポイント)
 9位:夫婦間の問題の解決・和解(45ポイント)
 10位:退職・引退(45ポイント)

 離婚が及ぼすストレスは「配偶者の死別」に次いで、第2位にランキングされています。一方で、結婚の方も第7位にランクインしています。また、9位に「夫婦間の問題の解決・和解」というものが入っています。一見すると、結婚や夫婦問題の解決・和解はポジティブな出来事であり、ストレスとは無縁に思えるかもしれません。しかし、心理学的には「喜ばしい出来事」か「悲しい出来事」かではなく、どれくらい変化が及ぼされるのかが、ストレスの大きさと関係してきます。結婚や夫婦問題の和解の「ストレス・ポイント」が高めなのは、それをきっかけにしてライフスタイルが大きく変化するからです。そして、私たちは変化した状況に適応しようと努力します。独身生活と結婚生活でライフスタイルが大きく変化するということは、例えそれがポジティブな変化であったとしても、変化にしっかりと付いていくのには、それなりに高いストレスが発生するのです。

 離婚は「刑務所への収監」よりもストレスが高いとされているのも、変化の大きさが影響しています。離婚は一度すると、ライフスタイルが大きく変化し、離婚前の状態には基本的に戻りません。しかし、刑務所への収監の場合は、釈放される可能性があるので、元の生活に戻れるかもしれないわけです。離婚には「不可逆性」という、もう、元には戻れないという意味でのストレスの大きさがあるのです。

 離婚を考えていらっしゃる方々が、現状が辛いからそれを一刻も早く何とかしたいと思うのは当然のことです。しかし、離婚したら状況は変わるものの、その大きな変化に自分が適応できないと、離婚前よりもメンタルが悪化する可能性が高いのです。

【3】離婚前・離婚後でメンタルはどう変わるのか?

 離婚を最終的に決定するのは当事者同士であり、心理カウンセラーなどの専門家が当事者の意向を無視した関わり方はできません。しかし、離婚は前述のように不可逆的なものなので、元に戻るということは非常に難しいです。そこで、離婚を決意したとしても、そこになるべく後悔は少なく、ある程度の納得した状態で離婚できればという希望を持つ方は多いでしょう。そのためには、離婚前のメンタル状態と離婚後に起こりやすいメンタルの変化について、あらかじめ予測(覚悟)しておくことが大切です。

(1)離婚前のメンタル状態

  一般的には、配偶者に対する不満や怒りなどのネガティブな感情が多いでしょう。それに加えて、離婚後に自分は一体、どうなるのだろうという将来に対する不安も抱えることになるでしょう。さらに、いざ離婚するとなれば、法律的な手続きなどを進める必要があり、生まれて初めてやることも多くあるでしょう。これまでに経験がない物事に直面すると、どんな人でも高いストレスに曝されることになります。

(2)離婚後に起こりやすいメンタルの変化

  離婚することで夫婦間の問題が解消されれば、ストレスが軽減することは十分にあり得ます。しかし、生活面、特に対人関係が大きく変化し、新たなストレスを抱えることになります。毎日、顔を合わせていた相手と会わなくなるということは、コミュニケーションが確実に減ります。特に熟年離婚の場合、既に退職・引退をしている年齢では、配偶者とコミュニケーションを取らなくなることは、私たちの心理面に多大な影響を及ぼします。熟年離婚がきっかけで、コミュニケーションが減ったために、認知機能が低下してしまい、認知症になるケースも多いです。実は毎日喧嘩ばかりしているような関係性でも、全くコミュニケーションが何も無い状態よりは、はるかにメンタルへルス的に健全であるということが研究の結果、明らかになっています。嫌いな人と暮らすことよりも、誰とも接触がない孤独の方が、メンタルへのダメージは深刻なのです。そのため、離婚を決意するのであれば、まずはコミュニケーションを取る相手を予め確保し、孤独によるダメージに対処する方法を考えておかなければならないのです。

【4】夫婦カウンセリングとは?

 私たちは極めて社会的な生き物なので、対人関係上の問題でストレスを抱えることが多いものの、同様にストレスを軽減させるきっかけも対人関係であることが多いです。心理学ではストレス軽減効果を持つような対人関係のことを総称してソーシャル・サポートとよんでいます。離婚を決意した場合、離婚後に自分のメンタル面をサポートしてくれる“誰か”を事前に見つけておくことが大切です。ソーシャル・サポートは両親や友人・知人などが該当しますが、心理カウンセラーなどの専門家も、心理学的・精神医学的な見地から、あなたをサポートしてくれます。
 心理カウンセリングには、夫婦カウンセリングというアプローチがあります。これは、1対1のカウンセリングではなく、夫婦が同席し、そこに心理カウンセラーが入って実施されるものです。基本的には予防的な意味で実施されるものなので、離婚を特別に推奨するようなことはしません。ただ、仮に離婚の決意が固まっているとしても、夫婦でカウンセリングを受けることで、何でも話を聞いてくれる心理カウンセラーからソーシャル・サポートを得ながら進めていくことができ、後悔の少ない納得できる離婚に向かって進むことができます。夫婦カウンセリングを専門とする心理カウンセラーもいますので、こういった専門家に間に入ってもらうのも1つの選択肢です。

まとめ

今回は心理学・精神医学の観点から離婚について解説しました。夫婦カウンセリングはオンライン上で実施するのは難しいものです。ですが、まずはお1人でも、ホッとライフのように手軽に相談できる方法を活用されてみるのも1つの手です。夫婦間の事柄はなかなか他人の話せず、一人で悩んでしまうことも多いでしょう。しかし、このまま一人で抱え込んでしまうと、重篤なメンタル不調に陥ってしまう可能性もあります。ホッとライフでは、専門家に気軽に相談できる体制が整っています。離婚に関する問題も、しっかりとお話を伺いながら、あなたにとって最適な選択肢を一緒に探していくことができますので、お気軽に御相談いただけければと思います。

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