営業と心理学 – 説得的コミュニケーション・表情によるコミュニケーション –

営業と心理学 – 説得的コミュニケーション・表情によるコミュニケーション –

営業活動は、お客様の心をつかむことが非常に需要になります。しかし、お客様も千差万別で、1つの方法だけで、いつも成功するとは限りません。そこで、今回は心理学的な観点からお客様への上手な営業方法について解説していきたいと思います。

目次

  1. 宣伝・広告の心理学
  2. 説得的コミュニケーションとは?(1) – お客様の態度を変化させる方法 –
  3. 説得的コミュニケーションとは?(2) – 顧客ニーズに合わせた説得方法 –
  4. 表情によるコミュニケーション – 言葉以外のコミュニケーションの重要性 –
  5. まとめ

【1】宣伝・広告の心理学

どんな人にとっても、形のある商品も形のないサービスも、全ての人は基本的に「知らない」というところからはじまります。営業において、まずは「知ってもらう」というところからスタートしなければなりません。しかし、何千、何万とある商品・サービスの中から、自社のものを選択してもらうには、お客様・ユーザーの心理を動かす必要があります。そのため、営業のスタートには宣伝と広告という要素が重要になります。心理学では、宣伝・広告の「王道」となる流れがあり、以下のように定義されています。

(1)注目(attention):まず、お客様・ユーザーを商品・サービスに注目させる。

(2)興味(interest):お客様・ユーザーに商品・サービスの内容に興味を持ってもらう。

(3)欲求(desire):お客様・ユーザー様に商品・サービスを“欲しい”と思ってもらう。

(4)記憶(memory):お客様・ユーザーに商品・サービスのことを記憶してもらう。

(5)購買(action):お客様・ユーザーに商品・サービスを「手に取ってもらう」(購買行動)

 これら5つのステップは、それぞれの頭文字をとって「アイドマ(AIDMA)」の法則とよばれています。これらは単にチラシやCMなどの広告でも活用されていますが、いわゆる“営業マン”も、この5つのステップを意識しながら、お客様・ユーザーとコミュニケーションをとるのが基本と言えるでしょう。

【2】説得的コミュニケーションとは?(1) – お客様の態度を変化させる方法 –

 営業において、「アイドマ(AIDMA)の法則」に沿って対応する中での目標は、お客様・ユーザーの態度を変えることです。注目していない状態から注目する状態へ、興味が無い状態から興味を持つ状態へ、欲しいと思っていない状態から欲しいを思う状態へ、これらは全て、お客様・ユーザーの態度を初期状態から変化させることです。社会心理学で態度変容とよばれるこの現象は説得によって引き起こされるものであり、いくつかのアプローチ手法が提唱されています。

(1)ドア・イン・ザ・フェイス

   まず最初に受け入れてもらえなさそうな要求を提示し、それが拒否された後に、最初の要求を撤回して、新たに小さな要求を提示するという手法。たとえば、いきなりでは絶対に購入してもらえないであろう100万円の商品の営業をした後、10万円の商品について営業するのが、ドア・イン・ザ・フェイスの手法です。ドア・イン・ザ・フェイスの由来は、営業マンが訪問販売の際に「家に上がらせていただいて、商品の説明をさせていただけませんか?」と言ったら大抵の人が断りますが、その後で「では、玄関でかまいませんので、お話させていただけませんでしょうか?」といえば、営業がしやすくなるというものです。お客様・ユーザーは、一旦、要求を断ってしまったという意識があるため、次の要求を受け入れやすくなり、説得に応じやすくなるわけです。

(2)フット・イン・ザ・ドア

   まず最初に小さな要求を提示し、それが受け入れられたら、次に少し大きな要求を提示し、ということを繰り返す手法。たとえば、100円を貸してほしいと頼み、それが承諾されたら、やっぱり500円貸してほしいと頼む、というような流れです。営業マンがお客様の家の玄関に「足を踏みいれた」状態で玄関先で営業をし、そこから「立ち話もなんですので、よろしければ、上がらせていただいてもよろしいでしょうか?その方が、より詳細な説明ができますので・・・。」というのが、フット・イン・ザ・ドアの名前の由来です。お客様・ユーザーは、いったん営業マンからの要求を小さいながらも承諾してしまっているので、その流れで次々と出される新しい要求を承諾しやすく、説得されやすい状態になるわけです。

(3)ロー・ボーリング

   魅力的な条件を先に提示し、こちらの要求を承諾してもらい、その後で最初に提示した好条件を少し悪い条件に変更させるという手法。あまりにも度が過ぎると詐欺になってしまうので注意が必要な手法ですが、最初の好条件提示の際に、お客様・ユーザーは「OK」してしまっている手前、条件が変わっても最初の態度を変えづらい、という状態になるわけです。これは、前述の2つの手法とは逆で、態度を変化させるのではなく、一度、決定してしまった態度を簡単には変えづらいという流れを作り出すものです。ロー・ボーリングの名前は、キャッチボールで「ちゃんと取りやすいボール(低めのボール)を投げるから」と言って、相手にキャッチボールを承諾させた上で、実際には取りづらいボールを投げるというシチュエーションに由来しています。

【3】説得的コミュニケーションとは?(2) – 顧客ニーズに合わせた説得方法 –

   前述の3つの説得的コミュニケーションは、営業に有利な状況を作り出し、お客様・ユーザーの態度変容を引き起こすものです。状況を作り出すという意味では、相手の状態に関係なくオールマイティに使えるという特徴があります。しかし、お客様・ユーザー側に“子どもである”とか“高齢者である”、“専門的な知識を持っている”などの強力なバックボーンがあると、説得が通用しない場合もあります。そこで、お客様・ユーザーそれぞれのニーズに合わせた説得的コミュニケーションも研究されています。
 

顧客ニーズに合わせた説得方法とは

顧客側のニーズに合わせた説得的コミュニケーションの代表的なものとして、精緻化見込みモデルというものがあります。たとえば、最新のノートパソコンの販売営業をしていくとしましょう。この際、説得のルートは中心ルートと周辺ルートの2つに分かれます。中心ルートとは、商品・サービスなどの“コア”となる特徴です。最新のノートパソコンであれば、PCのスペックなどの“パソコンそのもの”の重要な要素です。一方で、周辺ルートとは“たくさんの人が使っていて、人気がある”や“有名な芸能人も愛用している”などの、直接、商品・サービスそのものとは関係の無い要素です。この中心ルートと周辺ルートを上手に使い分ける必要ことで、顧客ごとのニーズに合わせた説得が可能になります。たとえば、システム・エンジニアのようにPCやITに関する専門知識を持つ人にノートパソコンを購入してもらいたいなら、周辺ルートである“沢山の人が使っている”とか“有名人も使っている”などの説得には意味がありません。逆に、高齢者の方などのパソコンやITに詳しくない人に対して、いくら高スペックであるという面を強調しても、態度変容は起こりません。商品・サービスに対する事前知識のある人には中心ルートで、事前知識の無い人には周辺ルートで説得することが効果的かつ、説得に要する時間を省くこともできます。

【4】表情によるコミュニケーション – 言葉以外のコミュニケーションの重要性 –

   表情もコミュニケーションにおいて重要な要素となります。表情は私たちが進化の過程で身に着けた非言語的なコミュニケーション手法であり、言語が異なる海外の方であっても、私たちは表情を見るだけで、相手の状態をある程度把握することができます。実は、私たちのコミュニケーションは、音声による言語的コミュニケーションは3割程度であり、残りの7割が表情などを含む非言語的コミュニケーションで成り立っているとされています。営業においても、言葉以外の非言語的なコミュニケーションが重要です。特に表情は、お客様・ユーザー側も営業マンの“顔”を見ながら話を聞いているので、営業マンがどんな表情なのかは、商品・サービスを「買う・買わない」の決め手になることもあります。進化心理学や社会心理学の観点から、相手を説得する場合には、相手と“同じ表情”をするのが効果的であるとされています。私たちは自分と同じ表情をしている人を“味方”であると認識する傾向があります。そのため、営業トーク中に、お客様・ユーザーと同じ表情をすることが効果的です。ただし、お客様・ユーザーの表情は一定ではないので、変化する表情に合わせて、営業マン側も表情を変えていく必要があります。

【5】まとめ

 今回は、主に社会心理学の観点から、宣伝・広告、営業アプローチなどについて解説してきました。よく“相手の心を掴む”という表現が使われますが、掴んだだけでは意味がなく、心をこちらに向けさせ、興味を持ったせ、欲しいと思わせ、実際に購買行動を起こさせなければなりません。そのためには、態度変容をうながすための説得的コミュニケーションが重要となります。今回、紹介させていただいたアプローチはいずれも、すぐに実施可能なものだと思いますので、興味・関心のある方は、是非、活用してみていただければと思います。

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