心理学とコーチング - パフォーマンス、メンテナンスとストレス

心理学とコーチング - パフォーマンス、メンテナンスとストレス

コーチングという言葉は主にビジネス場面でよく耳にするかと思います。ただ、カウンセリングとコーチングの区別がつかない、という人も多いのではないでしょうか?今回はコーチングについて心理学的な観点から解説をしていきたいと思います。

目次

  1. コーチングとは? – カウンセリングとは何が違う? –
  2. 仕事におけるコーチング
  3. コーチングにおけるリーダーシップ – 目標によって異なるコーチング –
  4. リーダーが気を付けるべきストレス
  5. まとめ

【1】コーチングとは? – カウンセリングとは何が違う? –

 心理学において、まずコーチとは「ある目的に向かって教え導く人のこと」と定義されており、教える人や指導者などを総称する言葉として使われています。基本的には運動やスポーツにおいて“コーチ”という言葉がよく使われており、特にテニスやサッカー、野球などでよく耳にするかと思います。そして、「ある目的に向かって教え導くという行為」を総称してコーチングとよびます。
 コーチングには似たような概念・言葉が多くあり、後述する仕事におけるコーチングの解説をする前に、まずは用語の整理を簡単にしてみたいと思います。

(1)コーチング

   コーチとよばれる専門家からアドバイスを受けながら、一緒に目標達成を目指すものです。コーチはスポーツにおいても“プレイヤーではない人”という位置づけなので、野球やサッカーなどにおいて、コーチがチームに加わって一緒にプレイすることはありません。従って、課題やプロジェクトに関しても、一緒に作業や仕事をするのではなく、あくまで“外側”からサポートやアドバイスをするのがコーチングです。また、コンサルティングも同様の意味合いがありますが、コンサルティングには、コーチングのように“付きっ切りで、寄り添いながら指導する”というニュアンスは薄いので、コンサルティングの形態の一種としてコーチングがある、というイメージが適切であるといえるでしょう。

(2)ティーチング

   ティーチングは単純に「何らかの物事・事柄について知っている人が、それについて知らない人に対して教えること」という位置づけになります。学校の先生が生徒に授業をするのはティーチングに該当します。コーチングとの違いは、一緒に目標達成を目指しているわけではない、ということです。なので、ティーチングはカリキュラムに沿って、必要事項を教えることがメインとなります。

(3)カウンセリング

  カウンセリングは病気・悩みなどに関して、カウンセラーが相談・支援をすることを意味しています。コーチングとの一番の違いは“アドバイスの量”です。コーチングにおいて、アドバイスをしないということはほぼないといってよいでしょう。しかし、カウンセリングは基本的にアドバイスをせず、クライエントの抱える問題への気づきを促すための傾聴に徹する段階があります。また、ストレスや対人関係、精神疾患などの治療・支援において実施されるのがカウンセリングであり、医療的な行為でもあるわけですが、コーチングには“治療”という側面はなく、医療的な行為においてコーチングという言葉が使われることはありません。

【2】仕事におけるコーチング

日本では1950年代から1990年代において「スポーツ = コーチ・コーチング」という考え方がメインでしたが、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ビジネス分野にコーチングという考え方浸透しはじめました。では、前述の3つの「〇〇〇ング」の違いを、ビジネスに当てはめて解説しながら、ビジネス場面におけるコーチングについてみていきましょう。

(1)ビジネスにおけるティーチング

   新卒社員に対して先輩が仕事の仕方を教えるのはティーチングにあたります。広い意味では、新人育成は経営上の利益に関連するかもしれませんが、基本的な目的は“社員教育”です。

(2)ビジネスにおけるカウンセリング

  産業場面におけるカウンセリングは、従業員のメンタルヘルス対策や仕事のストレスのサポート、精神疾患の治療・支援などを目的として実施されます。医療的な要素を含むものであり、心理カウンセラーや精神科医・心療内科医(産業医)などが実施します。ただし、従業員の悩みが仕事に関するものだったとしても、カウンセラーが職場で仕事を手伝ってくれたり、仕事の具体的なやり方をサポートしてくれるわけではありません。

(3)ビジネスにおけるコーチング

ビジネス場面におけるコーチングは、主に部下を持つ上司の立場にある人、管理職、経営者層などの、いわゆる“リーダー”に対して実施されます。そして、前述のスポーツの例と同様に、ビジネス場面においてもコーチはあくまで部外者であり、一緒に仕事をしてくれるわけではありませんし、残業を手伝ってくれたりもしません。また、「社長が部長」に対してや「部長が課長」に対して何か仕事上の指導をしたとしても、それはコーチングではありません。同一社内に所属している者同士の間で行われる指導は、スポーツと同様、“チームプレイ”の一環であり、広い意味で社長・部長・課長は全員“プレイヤー”です。コーチは社外の人間が客観的な立場から指導・アドバイスをするのが前提となります。

【3】コーチングにおけるリーダーシップ – 目標によって異なるコーチング –

 コーチングは主に“リーダー層”に対して実施されますが、特に多いのが“新人リーダー”に対するものです。たとえば、独立起業したばかりの新社長、新しいプロジェクトの責任者に任命された人などです。起業した会社の業種がどのようなものであれ、新規プロジェクトがどのようなものであれ、“上に立つ人間”ということであれば、共通するのがリーダーシップという要素です。心理学では、主に社会心理学や産業・組織心理学の分野において、リーダーシップに関する研究が実施されており、様々な理論が展開されています。ただ、どのリーダーシップ理論にも共通する2つの要素があります。

(1)リーダーシップの「P」:目標達成機能(パフォーマンス)

 リーダーは集団を目標達成に導くことが課されています。そこで、リーダーが目標達成のために、どのように貢献できているかが重要な要素となります。目標は、ただ無理難題や理想を掲げても意味がなく、現実的に達成可能かつ利益を創出できるものでなければなりません。リーダーは目標設定から、プロジェクトの進捗状況の把握、不測の事態の洗い出しと対応、プロジェクトの加筆・修正などに携わりながら、ゴールを目指さなければなりません。
コーチングでは、リーダーが目標達成機能を十分に発揮するためにはどうすれば良いのかを一緒に検討しながら、PDCA(プラン・ドウ・チェック・アクション)を繰り返し、目標へスモール・ステップで進んでいきます。

(2)リーダーシップの「M」:集団維持機能(メンテナンス)

 リーダーは集団内のメンバーのことを常に気にかけている必要があります。目標達成を重視するあまり、誰も着いて来ないのでは、リーダー失格です。たとえば、プロジェクトの進捗に問題があったとして、リーダーがただプロジェクト・メンバーを叱責しているだけでは、メンバーの心は離れて行ってしまいます。チームが考えや行動がバラバラになってしまったら、プロジェクトは立ち行かなくなってしまうでしょう。メンバーが集団に居続けたいと思う気持ちや、メンバーが一丸となって目標に向かって行こうとする気持ちが、集団を維持する原動力であり、リーダーには、集団維持機能を発揮し続ける必要があります。
 コーチングでは、コーチと直接やり取りするのはリーダーのみであることが多いですが、その過程で、どのようにメンバーに接するべきか、メンバーのモチベーション向上方法、どうやってメンバーの得意分野を伸ばすのかなどについて検討していきます。

 リーダーシップにおいて、PとMは両方がバランス良く整っていないとダメです。Pを優先しすぎると、目標には近づけるかもしれませんが、メンバーの心はリーダーからもプロジェクトからも離れてしまいます。逆にMを優先しすぎると、単なる“仲良しグループ”になってしまい、目標達成や利益の創出からは遠のいてしまいます。コーチングで客観性が重視されるのは、いざチームの“内側”の立場になってしまうと、リーダー自身がPとMの機能をどれくらい発揮できているのかが分からなくなってしまうからです。外側の立場で、集団の中のリーダーがどのような状態にあるのかを把握し、PとMのバランスを調整していくことが、コーチングにおいて大切なのです。

【4】リーダーが気を付けるべきストレス

 リーダーになるということは、それまでと立場や環境が大きく変わるということです。そして、大きな変化には必ずストレスがつきものです。コーチングでは、集団が達成すべき目標に向けてアドバイスをしていきますが、その過程でリーダーのストレスケアが必要になることもあります。実は経営者や管理職などのリーダーは、そうでない人とは、ストレスの“出方”が異なることが、心理学の研究において判明しています。リーダーは、ストレスに対して、他者のサポートを求めず、我慢し、感情的にならずに一人で気丈に頑張る、という傾向があります。これは一般的なストレスチェックで計測するのが非常に困難です。ただし、周りには分からないように我慢し、感情を表に出さないだけで、ストレス自体は存在しています。このような状態を感情認知困難とよびます。リーダーは感情認知困難の状態に陥ることが多く、結果として、ストレスの“出方”が、喫煙・飲酒・ギャンブル・気晴らしのための無茶食いなどになります。リーダーはある程度、年齢が上であることが多いため、メタボリック症候群や糖尿病に繋がることもあります。コーチングでは、このようなリーダー特有のストレスへの対処も必要になります。

【5】まとめ

 今回は心理学的な観点からコーチングについて解説してきました。コーチングにも科学的な根拠がありますので、専門家であるコーチにも、科学者の視点が求められます。どちらかというと、悩みというよりも“課題解決”や“リーダーシップの発揮”というようなテーマについて相談したい場合は、カウンセリングよりも、コーチングの方がニュアンスとして適切です。ホッとライフでは、コーチングにも対応可能な専門家もいらっしゃいますので、是非、利用してみていただければと思います。

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