モラハラの心理学

モラハラの心理学

モラハラをはじめとするハラスメントの問題は特に産業場面で大きな問題となっています。2015年に義務化された従業員のストレスチェック制度において実施される職業性ストレス簡易調査票の新版(120問以上の項目からなるロングバージョン)には、しっかりとハラスメントに関する項目が含まれています。しかし、まだまだ適切な対策が進められていない企業・事業所も多く、厚生労働省も警鐘を鳴らしています。今回は、心理学・精神医学的な観点から、モラハラについて、その定義を含めた基礎的な部分から解説したいと思います。

目次

  1. 心理学におけるモラハラの定義
  2. モラハラが及ぼす影響
  3. モラハラを“する側”の心理
  4. 産業場面におけるモラハラの問題と解決策
  5. まとめ

【1】心理学におけるモラハラの定義

ハラスメントには、パワハラ・セクハラ・アカハラ・マタハラ・アルハラなどの様々な種類がありますが、これらのハラスメントをまとめて「モラル・ハラスメント(モラハラ)」と定義することが心理学、特に産業・組織心理学の最近の傾向となっています。結局、どんなハラスメントも“モラルを欠いた発言や行為”であるという意味では同じなのです。

モラハラをもう少し学術的に述べれば「対人関係上の問題として、何らかの力関係において優位にある者が、自分より劣位にある者に対して、精神的な苦痛を与えるような行為の総称」と定義されます。また、モラハラをしている側が「これは教育・指導の一環だ」という認識で行っていたとしても、その目的・内容・方法などが、客観的に必要な範囲を超えていたり、目的に照らし合わせて正当ではないと判断されたりする場合は、それはモラハラであるということになります。そして、前述の「力関係において優位な立場の者」という考え方についても、単に年上・上司・先生などだけではなく、有している情報の量、専門性、スキル、人脈(人的ネットワーク)などが“優位”なのであれば、そこにはモラハラが発生する要素があるといえます。そのため、例えば、専門性の高いスキルを持つ部下が、上司に対して『そんなことも知らないし、できないんですか?そんなんで、よく平気で部長なんてやってられますね!!』と発言したとしたら、それは「部下が上司に対してモラハラをした」ということになります。最近では、IoT技術の急速な発展によって、職位が上でも知識や技術は部下の方が上というケースも増えてきており、現実に部下から上司へのハラスメント被害が裁判に発展するケースもあります。

【2】モラハラが及ぼす影響

 モラハラについて、本稿では前述の心理学的な定義に基づいて、あらゆるハラスメントの総称として解説していきたいと思います。厚生労働省はハラスメントに関する調査報告を行っており、最新の平成28年度版があります(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000165751.pdf)。調査結果の細目については、厚労省の報告書に譲るとして、問題は管轄が医療や健康・福祉を扱う厚労省であるという点です。特にメンタルヘルスへの悪影響は幅広く認められることを厚労省も報告しています。モラハラが具体的に及ぼす悪影響は以下の通りです。

 ・怒りや不安などのネガティブ感情の発生
 ・仕事(勉強)に対するモチベーション低下
 ・不眠
 ・欠勤日数や欠席日数の増加
 ・医療機関への通院・薬の服用
 ・医療機関への入院
 ・休職や退職
 ・自殺を含む自傷他害の発生

 モラハラが及ぼす問題は場合によっては、身体的な怪我などに発展するケースもありますが、そこまで行くと暴行や傷害といった事件性を帯びたものになってしまいます。そうなると、厚労省よりも、法務省や警察庁が扱う問題になってきます。実際に、モラハラの形が「身体的な攻撃」である割合は全体の数パーセント程度であり、メンタルへルスやそれに付随したソーシャルな問題の方がはるかに多いということが厚労省の報告書の中でも言及されています。

【3】モラハラを“する側”の心理

 では、モラハラという社会的な問題行動を“する側”には、どのような心理的特徴があるのでしょうか。現時点で「ハラスメント障害」や「モラハラ症」などのように、モラハラをするという「症状」を示すという特徴を持つ精神疾患はありません。ですが、モラハラという行為をパーソナリティや発達、感情の調整機能という観点から捉えることで、モラハラをしてしまいやすい人、というものが見えてきます。ただし、後述するケースは「モラハラをしたい」と積極的に思っているというよりは、むしろ既にメンタルヘルスに問題のある人が、他者とのコミュニケーションが上手くできなかった結果として「モラハラになってしまった」というように捉えられる、というものです。

 (1)パーソナリティ障害もしくは、その傾向を持つケース

 モラハラは対人関係上の問題であるため、対人関係上のトラブルを抱えやすいパーソナリティ(性格)の問題から派生することが多いものです。これは、積極的にハラスメントをしようという意図があるのではなく「モラルを遵守する」ことや「ハラスメントは悪いことだ」というルールよりも、パーソナリティ(性格)というルールの方が優先されてしまうからです。モラハラに関して言えば、特に反社会性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害、ないしは、これらの傾向を持つ人がトラブルを引き起こすことが多いです。モラハラに繋がり易い要素として、反社会性パーソナリティ障害(傾向)では他人の権利や法律、社会的なルールを無視するという特徴が、境界性パーソナリティ障害(傾向)では他者を突然こき下ろしたり、他者を巻き込んだ身勝手な行動という特徴が挙げられます。

(2)自閉スペクトラム症もしくは、その傾向を持つケース

 最近、“大人の発達障害”という言葉を耳にすることが多くなっていますが、自閉スペクトラム症は代表的な神経発達症(発達障害)の一種であり、対人コミュニケーションに関するトラブルを抱えやすい傾向があります。特にモラハラについては、他者の感情に共感できない、言ってはいけない言葉が分からない、いわゆる“空気が読めない”、皮肉やお世辞を理解が困難、極端な無関心さなどが問題の原因となる可能性が高いと考えられます。

(3)感情調節障害

 私たちはポジティブな感情もネガティブな感情も、自分の意思である程度コントロールすることができます。しかし、メンタル不調や精神疾患によって、感情のコントロールができなくなってしまっているケースがあります。モラハラとの関連で言えば、重篤気分調節症は怒りをコントロールできずに癇癪を起こすことが多く、他者に攻撃的な態度を取りがちです。

【4】産業場面におけるモラハラの問題と解決策

 モラハラは特に産業場面において問題視されており、厚労省が対策に乗り出しています。モラハラが産業場面に及ぼす悪影響について、厚労省の報告書では以下のようなものが挙げられています。

 ・職場の雰囲気の悪化
 ・労働生産性の低下
 ・企業イメージの低下
 ・訴訟などによる金銭的負担
 ・休職や離職による人材不足

 モラハラはこのような様々な問題の引き金になります。そこで、モラハラを防ぐために以下のようなアプローチが考えられます。

(1)モラハラを“する側”の治療・支援

 モラハラを“する側”にメンタル不調や精神疾患の可能性があるのは前述の通りです。モラハラ被害に合った方がメンタル不調になり、治療・支援が必要になるというケースも当然ありますが、逆にモラハラを“する側”の方が治療・支援が必要なケースも多いと考えられます。自分の性格のことで悩んでいる、他人と上手くコミュニケーションが取れない(空気が読めない)ことで“生きづらさ”を感じている、怒りの感情をコントロールできない、などに心当たりがある方は、実は“モラハラ加害者予備軍”の可能性があります。しかし、“心当たりがある程度”で精神科などの医療機関に通うのはハードルが高いと感じる方が多いでしょう。まずは、心理カウンセラー等の専門家に気軽に相談してみることをお勧めします。また、モラハラをする側の人達も実は自分をコントロールできずに苦しんでいるというケースもあります。周囲にそういった方がいるようであれば、カウンセリング・ルームなどへの相談を勧めてあげることもハラスメント防止につながります。

(2)モラハラは心理カウンセリングの対応領域

 心理カウンセラーなどの専門家に相談すべきなのは、病気や不眠などばかりではありません。実際、モラハラなどの対人関係上の悩みに関する心理相談は非常に多いです。モラハラに関する相談を職場内で上司や人事部にすることはハードルが高いかもしれませんし、おそらく最終的には“モラハラをする当事者”との「対決」というフェーズは避けて通れないでしょう。その過程で、個人情報保護よりも情報共有や情報の取扱いに関する透明性が優先されてしまうことも多いです。しかし、心理カウンセリングの場合は、あくまで治療同盟・治療契約を結んでいるのは相談者本人のみであり、加害者側を交えた対応は基本的にしません。安心して、ゆっくりとお話を傾聴させていただき、けして個人情報が漏れることがないのが心理カウンセリングですので、まずは専門家に気軽に相談してみることが大切です。

 モラハラはホッとライフが提供するオンライン・カウンセリング・サービスにおける対応領域に含まれています。ホッとライフでは、心理学・精神医学の専門家がしっかりと皆様のお話を傾聴し、問題の改善・解決していきます。モラハラについても、相談のタイミングが早期であればあるほど、効果的なサポートが可能になります。もちろん、個人情報は保護されますので、安心してお気軽に御相談いただければと思います。また、“このままでは、自分がモラハラの加害者になってしまうかも?”という危惧を抱いている方も、ホッとライフで相談をお受けすることが可能ですので、こちらもお気軽に御相談いただければと思います。

まとめ

 今回は、モラハラについて、心理学・精神医学的な観点から解説させていただきました。モラハラは大きな社会問題となっていますが、結局のところ「対人関係上の問題」であるということには変わりありません。これは心理カウンセラーが対応することの多い領域であるものの、まだ“病気や具体的な症状”が伴う段階ではない、いわゆる“未病”のケースです。だからこそ、ホッとライフのようなオンライン・カウンセリングの方が比較的相談しやすいサービスではないかと思いますので、お気軽に御相談いただければと思います。

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