共感の心理学 -「共通のゴール」を持つために-

共感の心理学 -「共通のゴール」を持つために-

共感は他者との対人関係において非常に重要な要素の1つです。心理学の研究において、共感は他者への理解を深め、円滑なコミュニケーションの形成の基礎となることが判明しています。では、共感とはどのようなもので、どうしたら「共感してもらえる」のでしょうか。

目次

  1. 心理学における共感の定義とは? - 同情とは違う? –
  2. 共感は「共通のゴール」を作るための重要なキーワード
  3. 共感性の欠如という問題 – 共感と精神疾患の関係 –
  4. 共感する、共感されるには?
  5. まとめ

【1】心理学における共感の定義とは? - 同情とは違う? –

(1)ポジティブかネガティブか、共感と同情の違い

 共感と同情は似ているように感じる方も多いかと思いますが、実は全く異なるものです。一般的に他者から「共感されたい!」と思うのは、誰しもが抱えている対人関係におけるポジティブな欲求です。ですが、他者から「同情されたい!」と思ったとしたら、そこには「かまってほしい」「自分は惨めだ」「もっと優しく接して欲しい」などのネガティブな要素が背景にあるということになります。
また、共感は「ヒト」と密接にリンクするものであり、その人の性格や人柄などとの関連が強いものです。一方で、同情とは「出来事」や「経験」と密接にリンクするものであり、「そんなに辛い経験をしたなんて、かわいそう」といったように主軸は何らかの「ネガティブな出来事」の方に置かれるものです。

(2)共感、リーダーには必須の条件

 共感はポジティブなつながりを作り、同じ目標に向かって進んでいくきっかけとなります。従って、職場のリーダーなどに共感が集まる状態は、仕事のパフォーマンスを上げ、集団(企業組織や事業所など)の雰囲気を良くし、「ここで働き続けたい」という思いを強くさせます。共感を集めることができるというスキルは「良いリーダー」における重要な条件の1つなのです。一方で、同情は一次的に優しくしてくれたり、味方になってくれたりする人が出てくるかもしれませんが、ネガティブな出来事に紐づいている感情なので「次に進む」とか「仕切り直す」、「改善・解決に向けて努力する」などの前向きなアプローチを阻害してしまいます。「リーダーに対して、みんなが同情してくれている」という状態は、みんなが過去の出来事に囚われている状態なので、仕事のパフォーマンスは上がらず、職場の雰囲気も悪くなってしまいます。
 また、人間は他者から共感されることで、ポジティブな気持ちになり、自尊心が高まります。つまり、共感されるリーダーの存在が集団を1つにまとめると同時に、リーダー自身の持つポテンシャルを最大限に引き出すきっかけともなるのです。

【2】共感は「共通のゴール」を作るための重要なキーワード

 カウンセリングについて述べると“共感する”という能力は心理カウンセラーに必須のスキルです。より専門的には共感的理解とよばれ、あたかもその人自身のようにという「as if」の状態を維持しつつ、けして相手の感情に振り回されない態度を取る、と定義されています。心理カウンセリングを受ける方は、何らかの悩みやネガティブな感情をいただいています。そして、それを改善・解決したいと思い、専門家に相談しに来るわけです。そこで、相談者の心の中にあるものを、その人自身であるかのように正確に捉えるのが共感的理解です。もし、ここで専門家が相談者に「同情」してしまったとしたら、それは相談者の感情に専門家が飲み込まれて、同じように悲しんだり、苦しんだりするということになります。これでは、2人でネガティブな気持ちに苛まれるだけで、改善・解決に向けて前向きに進んでいくことができません。
 共感が心理カウンセラーの基本的態度であるのは、共感がメンタルヘルス上の問題や精神疾患の治療・支援に有効だからです。相談者は心理カウンセラーから共感されることで、悩みを話しやすくなり、心の中を整理整頓できるようになります。これにより、何が一番の問題で、どうやって解決すればいいのかという目標設定が専門家と相談者の間で明確化されます。つまり、共感は人と人を結ぶ「共通のゴール」を作り出すための重要なキーワードなのです。

【3】共感性の欠如という問題 – 共感と精神疾患の関係 –

 「みんなから共感されたい」と思う人は多いでしょう。また、お互いに共感し合えることで、ポジティブな相互作用が生み出されるのも事実です。しかし、中には他者に共感することができなかったり、共感性が低かったりする人もいます。

(1)自閉スペクトラム症およびその傾向

 神経発達症(発達障害)の一種である自閉スペクトラム症は、社会性やコミュニケーション能力に関する問題が顕著な精神疾患で、以下のような症状を示すものです。

・他者とかかわり、考えや感情を共有できない
・直感的なコミュニケーション理解が困難(いわゆる「空気が読めない」)
・言語的・非言語的コミュニケーションの協調が困難
・皮肉やお世辞を理解が困難(本音と建て前が分からない)
・非常に狭い範囲の興味、関心や極端な無関心

共感は「相手の立場で考える」というスキルなしには成立しません。そのため、自閉スペクトラム症およびその傾向を持つ人から共感を得ることは非常に難しいです。

(2)パーソナリティ障害およびその傾向

 対人関係において、どのような態度や行動を示すのかは、パーソナリティ(性格)と強く関連します。以下のようなパーソナリティ障害(およびその傾向)の場合、他者と上手く関係性を築くことが困難になります。

(1)猜疑性パーソナリティ障害:他人の言動を全て悪意のあるものと解釈し、常に不信感や疑念を感じている。
(2)シゾイドパーソナリティ障害:社会性に乏しく、他者とのコミュニケーションが希薄。特に他者との間に何らの感情も発生しない。
(3)統合失調型パーソナリティ障害:妄想的な考えが多く、風変わりな行動・発言が多い。他人とのコミュニケーションにおいて、様々な問題を抱えやすい。
(4)反社会性パーソナリティ障害:他人の権利や法律、社会的なルールを無視し、よく嘘をつき、衝動的で暴力的な行動が多い。
(5)境界性パーソナリティ障害:感情の起伏が激しく、他人を褒めたたえたかと思えば、急にこき下ろしたりするなどの問題を起こす。また、見捨てられ不安が強いため、他人を巻き込んだ身勝手な行動が多く認められる。
(6)演技性パーソナリティ障害:派手で他人の注意を過度に引くような、言動・行動が多く、全てが芝居がかって見える。
(7)自己愛性パーソナリティ障害:自分は凄い、褒められるべき人間だという強い思い込みがあるが、他人への共感は欠如している。
(8)回避性パーソナリティ障害:他人から非難・批判・拒絶されるということに強い恐怖を感じ、他人との接触をとにかく避ける。また、何か新しいことにチャレンジしたりすることを極度に嫌がる。
(9)依存性パーソナリティ障害:とにかく何でも他人に面倒を見てもらいたいという気持ちが強く、他人からの助言や保証がなければ何もしようとしない。
(10)強迫性パーソナリティ障害:柔軟性がなく、自分の決めたルールを厳密に守ることを重視する。仕事・勉強の効率や他人との関係性を犠牲にしてでも、とにかく秩序や完璧さを求め、融通が全くきかない。

 これらはいずれも「他者への共感 < 自分の性格的パワー」であり、あまり良くない「自分らしさ」が前面に押し出されてしまい、他者の考えや気持ちがないがしろにされてしまうのです。従って、パーソナリティ障害およびその傾向を持つ人から共感を得ることは非常に難しいわけです。

【4】共感する、共感されるには?

共感はどのように発生するのかについて、心理学では主に社会心理学や感情心理学の観点から研究されています。そして、これらの研究成果はコインの裏表のようなもので、共感が発生するきっかけは、そのまま「共感されるためのテクニック」に応用することが可能です。

(1)感情の認知:他者の感情に適切な名前をつける

 誰でも自分が理解できないモノ・ヒトに共感はできません。そこで、まずは名前をつけることで、モヤモヤとして不明瞭な状況をはっきりとさせ、カテゴリー化させます。たとえば「会社の上司がいつもと雰囲気や態度が違う」というだけだと、状況が不明確なので、これでは共感のしようがありません。そこに「リストラを命じられた部下思いの上司が苦しんでいる」というストーリーが加われば、それは「苦しい」という名前を持った感情として、理解され、共感されます。つまり、他者から共感されるためには、自分自身の感情(状態)を、一言で分かり易くまとめられるようなキーワード化することが重要です。

(2)役割取得:他者の立場に置かれた自分を想像し、他者の感情を推理する

 共感してくれた他者は、何らかの新たな役割を担うことになります。たとえば「リストラを命じられた部下思いの上司が苦しんでいる」という状況に対して共感してくれる人がいたとすると、その人は「上司の相談相手」という新たな役割を取得することになります。従って、他者からの共感を得たいのであれば、具体的な“役割”をイメージした情報発信が重要になります。情報を受け取った各々が「私は〇〇という形でサポートできるかも?」とか「それなら、△△と声をかけてみようかな?」などと思えるような“サイン”を分かり易く出すと共感を得やすくなります。

まとめ

今回は心理学的な観点から共感について解説しました。共感を得たいという人には共感を得るためのテクニックを提示しましたが「共感されたい」という人には、ホッとライフのようなオンライン・カウンセリング・サービスが1つの選択肢です。前述のように、共感的理解は心理カウンセラーの必須スキルですので、安心してお話しいただけます。

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