実は日本人だけ?対人恐怖症とその解決法

実は日本人だけ?対人恐怖症とその解決法

怖いものというのは、誰にでも1つや2つはあるものですが、それが生活に支障をきたすレベルになってしまうと一刻も早く改善・解決する必要が出てきます。今回は恐怖症について、特に対人関係や社会的な恐怖について心理学・精神医学的な観点から解説したいと思います。

目次

  1. 恐怖症とは何か?
  2. 対人恐怖症になるのは日本人だけ?
  3. 必要な恐怖もある – 人見知りをしないことが持つ危険性 –
  4. 社交不安と対人恐怖
  5. 対人恐怖の解消法
  6. まとめ

【1】恐怖症とは何か?

精神医学において、恐怖症の正式名称は限局性恐怖症というものになります。限局性とは「特定の何かだけに」という限定的な恐怖という意味です。限局性恐怖症は不安と恐怖の感情を主な症状とするもので、不安・恐怖の対象となるモノ・コトを徹底的に避けようとする回避行動が強く認められるものです。そして、不安や恐怖の対象となるモノ・コトは実に多岐にわたり、クライエントの数だけあるといっても過言ではありません。代表的なものとしては、以下のような分類があります。

(1)動物型:犬や虫(ゴキブリなど)の生物に対する恐怖・不安

(2)自然環境型:高所・水・雷・放射線などに対する恐怖・不安

(3)血液・注射・外傷型:血液・先端・歯科治療などに対する恐怖・不安

(4)状況型:閉所・暗所・赤面・飛行機・エレベーター・電車などに対する恐怖・不安

上記の4つ以外にも様々なパターンの恐怖症があり、対人恐怖もその中の1つです。ただし、対人恐怖は上記の4つの型のどれとも異なり、少し特殊なカテゴリーになります(※赤面恐怖は、対人恐怖との関連の強いものではあります)。

【2】対人恐怖症になるのは日本人だけ?

様々な限局性恐怖症の中の1つに対人恐怖症があるわけですが、実は対人恐怖症を発症するのは日本人だけではないか、という議論があります。ただし、絶対に日本人しか対人恐怖症にならない、というわけではありません。世界基準の有病率と比較すると、日本人の有病率はかなり高いということが判明しています。また「疾患としての市民権」とでもいうべき概念の浸透率の高さも日本特有のものであるといえるでしょう。海外で「他人が怖い」という話をしても、あまりピンとこないというケースが多いです。しかし、日本人全般に対するパーソナリティ特性として「甘え」や、人見知り、口下手、はっきりとした自己主張をしないなどがあり、コミュニケーションが全体的に消極的です。その延長線上には、他人に対する不安感や恐怖感があると考えられます。従って、日本人は特に他人に対する不安や恐怖を抱きやすい傾向があり、対人恐怖症を発症しやすいのではないかと考えられます。

 【対人恐怖症の種類と症状】

対人恐怖症の主な症状として、他人と関わるあらゆる場面において、強い不安と恐怖を感じるというものがあります。たとえば、人前で話すことに対するスピーチ恐怖、人前に出るとアガってしまって顔が赤くなることに対する不安・恐怖である赤面恐怖、誰かに見られている気がしてレストランなどで食事ができない会食恐怖などがあります。さらに特徴的な症状として、不安や恐怖を感じると同時に、頭痛・動悸・発汗などの身体症状を伴うというものです。

【3】必要な恐怖もある – 人見知りをしないことが持つ危険性 –

恐怖という感情さえなければ、もっと楽に生活できるのにと思う人もいるかもしれません。しかし、私たちはとてつもなく長い年月をかけて生物として進化する過程で、恐怖を感じるという機能を常に持ち続けて今に至っています。つまりは、恐怖という感情は私たちにとって必要なものであり、恐怖を感じる能力を持った先祖だけが生き残り、子孫を残していったというわけです。では、恐怖を感じることにどのようなメリットがあるのでしょうか。

信用できない他人を見抜くため

一度でも恐怖を感じた経験がある事柄を、私たちは決して忘れません。それは、忘れてしまうと、また同じことを繰り返し、また恐怖を感じることになるからです。しっかりと記憶に留めておくことは苦痛を伴うものですが、うっかり忘れたことで同じ失敗を繰り返さずに済みます。私たちの先祖は恐怖 = 死 という図式が成り立つことの多い過酷な時代を生きていました。そのため、恐怖を感じることで、その状況や場所をしっかりと記憶し、絶対に忘れないようにすることで、同じ失敗を繰り返さずに死ぬ可能性が下げていたのです。この恐怖と記憶に関するメカニズムは現在の私たちにも、しっかりと引き継がれています。ただし、時代が変わり生命の安全が確保されるようになると、恐怖と記憶の密接な関係性が逆に仇となって、限局性恐怖症やPTSDなどの精神疾患の原因となってしまったわけです。

同じ失敗をしないため

私たちは子どものころ、父親や母親以外の人物には、あまり懐かず、人見知りをすることがあります。実は人見知りとは発達心理学的には正常な反応であり、逆に人見知りをしない子どもは問題があるということが判明しています。他人との関係性の中で、その人が信用できる人かどうかは非常に重要です。なぜなら、信用できない他人は自分にとって危険であり、デメリットを生み出す可能性が高いからです。子どものころに人見知りをするのは、まだ大人のようにコミュニケーションがとれないため、信用できる人かどうかを確認するための情報収集と情報分析ができないからです。まだ、信用できる・信用できないの分別がつかないので、とりあえず絶対に信用できる父親・母親などの一部の人間以外には人見知りをして、ある程度距離を置くことで自分の安全を確保しているのです。子どもが人見知りをするのは、ある程度の年齢までは、必要かつ適切なスキルの発動であるというわけです。

人見知りをしないデメリットとは

逆に人見知りを全くしない、初対面の赤の他人に対する恐怖感や不信感を全然抱かないということが特徴となる精神疾患があります。これは愛着障害の一種である脱抑制型対人交流障害とよばれる精神疾患です。これは、子どもの頃から全く人見知りをせず、誰とでも馴れ馴れしい態度で接するという特徴を持つものです。一見、良いことのように思えるかもしれませんが、子どもの場合は誰にでも付いて行ってしまうので、誘拐や行方不明などの問題が発生しやすくなります。また、大人になった場合は、簡単に騙されたり、反社会的な個人・集団とも気軽に繋がりを持ってしまったりという問題があります。通常、知らない人や怪しい人に対して、私たちは怖いという感情を持ちますが、脱抑制型対人交流障害のクライエントはそういった感情を初対面の人に対しても抱かないため、様々な問題に巻き込まれてしまいます。実は恐怖感は他人との関りを持つ中で、自分を守るためのブレーキの役割を果たしているのです。

【4】社交不安と対人恐怖

対人恐怖症は限局性恐怖症の中の1カテゴリーという位置づけにありますが、同時に社交不安症とも関連が強いとされています。
社交不安症は恐怖よりも不安がメインの症状となり、特に「まだやってもいないのに・・・」という段階で強い不安を感じてしまい、回避行動をとってしまうという特徴があります。つまり、まだ人前に立っていないのに「もし、人前で上手く話せなかったら、どうしよう・・・」という不安感が先行してしまい、人前で話すことから逃げてしまうということです。
また、社交不安症には、他人からのネガティブな評価に対する不安が強く「あの人の『ダメな奴だな』と思われたらどうしよう・・・」という強いイメージに囚われてしまうという問題があります。しかし、他人からどんな評価をされているのかを正確に知るには、その人に直接聞くくらいしか方法はありません。つまり、確認しようもないことに不安を感じているということ自体が杞憂に過ぎない可能性が高いわけです。ありもしない「批判」や「非難」に対して“どうしよう”と不安になってしまうのが社交不安症なのです。
対人恐怖症と社交不安症には重複する部分もあり、厳密に2つの疾患を区別することは難しいです。違いがあるとすると、それは不安と恐怖という感情の種類の違いです。不安とは基本的に未来に対する感情であり、まだ起きていないことに対するものです。従って、社交不安症には、発症する明確なきっかけが無い場合が多いです。一方で、恐怖とはより明確な感情であり、実際に起きたことをきっかけとする感情です。従って、対人恐怖症には、きっかけとなる出来事や人物が基本的には必ず存在します。

【5】対人恐怖の解消法

対人恐怖症は恐怖がメインであるものの、不安感も併発します。しかし、前述のように、不安はまだ起きていないことに対する感情であり、恐怖は既に起きてしまったことに対する感情であるという違いがあります。そのため、不安感と恐怖感では、改善・解決のためのアプローチが異なります。
不安感はまだ起きていない状態で「どうしよう・・・」となってしまい、行動を起こさないという問題に繋がります。そこで、認知行動療法のエクスポージャーという手法が効果的です。これは、不安を感じ対象にあえて接することで「自分の不安は杞憂だったんだ。別に何も起きないじゃないか!」という経験を積み重ねることで、不安を解消し、行動を活性化させるというものです。心理カウンセリングでも実施されることの多いこの方法は、まず、カウンセラーとクライエントが相談し、不安感の低い事柄から順に身を曝し、不安が杞憂であることを確認していくのです。
恐怖は既に起きた出来事や対応したことのある人物をきっかけとする感情です。従って、恐怖感は必ず記憶と関連しています。そこで、記憶の処理を活性化させ「あれは怖かったが、今は大丈夫」という状態を作り出します。心理療法の中でも比較的新しい手法であるEMDRというアプローチは、WHOが認定した最もトラウマ治療に効果的な心理療法となっています。EMDRは眼球運動を利用した手法であり、記憶の再処理を活性化させ、恐怖感を薄れさせつつ、記憶をより適切な状態に変化させることができます。

【6】まとめ

今回は対人恐怖について、限局性恐怖症、社交不安症、不安感と恐怖感との違いなどを織り交ぜながら解説しました。不安も恐怖も私たちの生活には必要な要素ではあるものの、極端な状態になると、私たちの生活を不自由で制限されたものにしてしまいます。しかし、不安も恐怖も私たち自身がコントローすることができるものであり、心理カウンセラーなどの専門家のサポートがあれば、比較的短期間での改善・解決も可能です。

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