注意力の心理学

注意力の心理学

集中して仕事・勉強に取り組みたいという人は多いと思います。今回は、注意力・不注意・注意力散漫などについて、心理学・精神医学的な観点から解説していきたいと思います。

目次

  1. 注意・不注意の心理学的定義とは?
  2. 集中すると甘いモノが食べたくなるのはなぜ?
  3. 注意力散漫とストレスの関係
  4. 注意力散漫に関する病気 – 注意欠如・多動症(AD/HD)とは? –
  5. 注意力散漫を防ぐには?
  6. まとめ

【1】注意・不注意の心理学的定義とは?

心理学において、注意とは「外部の刺激や内部の刺激などによって、脳が興奮・活性化している状態」と定義され、注意は覚醒レベルが一定以上の状態(しっかりと起きている状態)でしか発生しないことが判明しています。また、注意には以下のような分類があります。

(1)選択的注意

多くの情報の中から認知する情報を取捨選択する機能です。私たちは常に大量の情報にさらされながら生活しており、その中から瞬時に「いるもの」と「いらないもの」を判断しています。不注意や注意力散漫という状態は、これらの区別がちゃんとできなくなるという意味でもあります。

(2)処理容量・心的資源

私たちは一度に複数のものに注意を向けることができます。そして、同時に処理していくということもできます。しかし、これには限界があり、聖徳太子の伝説のように何人もの人の話を同時に聞いた上で、全ての情報を処理して同時に理解するというのは、非常に難しいわけです。注意力散漫な状態というのは、複数のことを同時やろうとすると、ミスが多くなってしまう状態のことを指します。

(3)持続的注意

集中力という言葉が示す通り、重要な事柄に注意を向け続けることができるかどうかも、重要な要素です。注意力散漫・不注意という状態は、一旦、注意は向けられるものの、その状態を継続できないということを意味しています。

【2】集中すると甘いモノが食べたくなるのはなぜ?

よく難しい試験の後、頭が疲れたような感じがするのは、試験中に脳が活発に活動してエネルギーを使ったから、つまり非常に集中していたからです。脳の活動で使用されるエネルギーは主に糖分です(ちなみに、身体を激しく動かす場合は脂肪が使われます)。頭を使って考える作業をした後に、無性に甘い物が食べたくなるのはこのためであり、この「甘いものが食べたい」という状態を引き起こしているのが、自律神経の一種である副交感神経です。集中して試験問題を解くのに消費されたエネルギーを補給するため、副交感神経が優位な状態になったというわけです。
最近、ダイエットの手法として「炭水化物抜きダイエット」や「糖質制限ダイエット」が流行っています。医師などの専門家の指導の下で実施している場合は、体調不良などを起こさないように、しっかりとバランスをとった食事制限の中で行われているはずです。しかし、個人的にネットなどで知って「やってみよう!」と思い、チャレンジしている人の中には、一切の糖質を摂取しないという非常に危険なアプローチをしている人もいるかもしれません。これは場合によっては、生命を危険にさらす行為なので、絶対にやめた方がいいのですが、実は注意力散漫という現象とも糖質制限は関係があります。脳は情報処理を行うためのエネルギーが無い状態では、何をするにしても集中力を発揮できません。従って、糖分(エネルギー)が足りないと、集中力も散漫になります。糖質制限ダイエットをしているせいで、仕事や勉強の効率が悪くなったり、全く集中できなってしまうこともあるわけです。

【3】注意力散漫とストレスの関係

注意力・集中力というのは、脳における認知機能の1つです。そのため、強いストレスや長期間にわたるストレスが脳や神経に悪影響を及ぼすことで、誰でも注意力散漫になってしまうことがあります。うつ病の診断基準の1つに「思考・集中・決定の困難」というものがあります(もちろん、この基準1つが当てはまるだけではうつ病と診断されません)。実は注意力散漫という現象は、メンタル不調に関する重要な“モノサシ”の1つなのです。
注意力散漫が引き起こす要因として、物忘れや紛失物が多くなる、整理整頓ができない、というものがあります。これらは記憶などの様々な他の認知機能とも関連するので、一般の方は「もしかして、認知症?」とか、後述する「大人のAD/HDなのか?」などと深刻に考えてしまうケースがあります。もちろん、これらの可能性がゼロではありませんが、ほとんどの場合は、ストレスが原因の一過性の注意力散漫状態が引き起こす現象であることが判明しています。

【4】注意力散漫に関する病気 – 注意欠如・多動症(AD/HD)とは? –

生まれつき注意力散漫な人というのも、少なからずいらっしゃいます。これは、神経発達症(発達障害)の一種であり、精神疾患のカテゴリーに分類されるものです。発達に関する障害なので、単に「子どものころ、よく宿題を忘れた」とか「落とし物が多いので、よく先生に注意された」というだけで診断されることはありません。神経発達症(発達障害)は、発達検査とよばれる専門的な検査を実施した上で診断されるものなので、前述のように一過性のストレスの影響で物忘れがひどい、というような場合にも、当然、診断はされません。
ただし、最近「大人の発達障害」という言葉を耳にすることが多いかと思います。これは、大人になってから発達障害になったのではなく、大人になって初めて自分が実は発達障害だったことに“気づいた(診断された・傾向があると言われた)”というものです。子どものころは軽度であったものの、大人になってより複雑な課題・作業をすることになり、特に時間が切迫している状況などで、問題が顕在化してきた、というのが、いわゆる「大人の発達障害」なのです。

注意欠如・多動症(AD/HD)の主な症状

神経発達症(発達障害)の中でも、特に注意力散漫と関連が強いのが、注意欠如・多動症(AD/HD)です。「注意欠如・多動症」と「・」で区切っているのは、注意欠如に関する症状のみが顕著で、多動性や衝動性に関する症状のみが顕著な場合があるからです。しかし、注意欠如・多動症(AD/HD)の多くのクライエントは程度の差はあるものの、注意欠如・多動性・衝動性の3つの症状群を合わせ持っています。以下が、注意欠如・多動症(AD/HD)の主な診断基準です。

不注意:以下の症状のうち、6つ以上が認められる場合

・顕著な不注意:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確
・注意の持続困難:授業、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい
・上の空:明らかに注意をそらすものがなくても、心がどこか他所にあるように見える
・指示に従えない:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、または容易に脱線する
・順序立てられない:資料や持ち物を整理できない、作業が乱雑でまとまりがない、
時間の管理が苦手、締め切りを守れない
・認知負荷の高い課題遂行が困難:宿題、報告書の作成、書類に漏れなく記入する、
長い文書を見直すなどができない、またはそういった作業を避け、嫌がり、やるとしても嫌々おこなう
・重要なもの、必要なものをよくなくす:落とし物・忘れ物が多い
・気が散りやすい:どうでもいいことで気が散ってしまう
・約束が守れない:約束を忘れてしまうことが多い

多動性と衝動性:以下の症状のうち、6つ以上が認められる場合

・手足の動き:いつもソワソワ・モジモジしたり、意味もの無くトントン叩いたりする
・勝手に動く:席に座っていなければならない授業中などに立ち歩く
・危ないが意味の無い行動:急に走り出したり、高い所に上ったりする
・静かにできない:静かに本を読んだり、映画館で静かに映画館書したりできない
・エンジン全開状態:いつも全力全開の状態の為、周囲の人がついて行けない
・順番を守れない:列に並んで自分の順番を待つことができない
・他人の邪魔をする:会話やゲームなどで順番やルールが守れない
相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始める

もし、上記の内容が自分に当てはまる気がする、そして、どうしても気になるという方がいた場合は、しっかりとした専門機関(病院やカウンセリングルームなど)で、発達検査などを実施してもらうことをお勧めします。少なくとも、勝手に自己判断するようなことは絶対にしない方がよいということは強くお伝えしておきます。

【5】注意力散漫を防ぐには? – 注意欠如・多動症(AD/HD)との付き合い方-

注意欠如・多動症(AD/HD)は遺伝的な要素も強く、治療によって「治った」という状態になるのは非常に難しいものであり、程度の差はあれ、一生「不注意な自分」というものと付き合っていかなければなりません。しかし、日常生活における注意力散漫によるミスを防ぐ方法はいくつかあります。

(1)そもそも人の集中力はもって90分間

中学校や高校は50分間、大学は90分間で授業・講義が設定されています。これには理由があり、まだ子どもである中高生では1つの課題(授業)に集中できる限界が50分程度であるということです(※学校運営などの様々な条件も要因となっています)。これが少し大人になると、90分間くらいは集中できるようになるので、大学では、そのようなタイムテーブルになっているのです。そして、この90分以上に人間の注意持続時間が延びることはあまりないと考えられます(※加齢に伴って徐々に注意持続時間は短くなる傾向があります)。従って、仕事をする場合にも、60~90分しか、同じ作業・課題に集中できないので、これくらいの時間で区切って、作業・課題の計画を立てるということが重要です。

(2)作業内容を変える

前述のように、時間にして60~90分くらいしか、集中力は続きません。しかし、これはあくまで「同じ作業・課題を続ける」という場合なので、実行する内容をガラッと変えてしまうことで、仕切り直しができて、再び集中力を復活させることができます。これは別に60~90分でやらなければならないということではなく、自分の中で「集中力が切れたなぁ」と感じたタイミングで、別の作業・課題に切り替えてみるのも効果的です。
また、音楽を聴きながら作業をするという人も多いかと思いますが、これは音楽への注意持続と作業への注意持続を同時に行っているため、心的資源の消費が激しく、注意力が散漫になりやすいケースも多いです。そこで、音楽を聞く時間と作業をする時間を明確に分けるというのも効果的です。

【6】まとめ

今回は注意力散漫について、心理学的な見地から、注意・不注意の定義、糖分の集中力の関係、ストレスや精神疾患と注意力散漫の関係などについて解説してきました。基本的に、私たちは集中することができない生き物です。平均的にたかだか90分くらいしか集中力は持たないというのが普通なのです。そこで、仕事は仕事でも、ただ同じことを続けるのではなく、色々な異なる作業内容をうまく切り替えていくという工夫が必要なのです。
こういった改善は第三者のアドバイスを元に進めるのが無理なく、効率よく進めることが可能です。お悩みであればホッとライフの相談員にご相談頂けると幸いです。

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