あがり症の原因と対策

あがり症の原因と対策

目次

  1. 「あがり」が起きる瞬間
  2. 「あがり」を引き起こすのは「未来への感情」
  3. 「あがり」と「他人」との関係
  4. まとめ

【1】「あがり」が起きる瞬間

「あがり」はスピーチや発表、音楽の演奏、スポーツなどの何らかのパフォーマンス中に発生するものです。そして、一番の問題は「今、自分のパフォーマンスが低下している」「今、自分のパフォーマンスが悪化している」と感じてしまうことなのです。つまり、「今、自分はダメだ」と自身で感じてしまった瞬間から「あがり」が始まってしまうということです。
 これは逆に言えば、たとえ他人の目から見てパフォーマンスが悪かったとしても、本人にその自覚がなければ「あがり」は起きないということでもあります。つまり、気の持ちようで「あがり」は対策・対処が可能なものでもあるのです。

【2】「あがり」を引き起こすのは「未来への感情」

 「あがり」は「自分は上手くやれていない」と感じた瞬間に起きます。では、なぜ上手くやれていない、低下している、悪化していると感じると「あがり」が起きてしまうのでしょうか。これには2つの感情が大きく関わっています。

(1)期待感

 より厳密には「作業成果への期待感」とよばれる感情です。「あがり」は実際に何かをやっている瞬間に「自分はダメだ」と思ってしまうことで、発生します。ですが、その前に「これで上手くやれば、自分に良いことがあるはず」という期待感があるからこそ、ダメだと思った瞬間に「あがって」しまうわけです。期待感は未来に関する感情であり、これから起こること・まだ起きていないことに対する「ポジティブな気持ち」です。まだ、結果・成果が定まっていない、実際にはどうなるか分からない、という状況において「上手くいったら良いのになぁ」という気持ちが先行することはよくあります。しかし、この期待感が過剰であると、失敗するわけにはいかないという感覚に襲われてしまいます。
 「あがり」への対処法としては、まずは事前に過度な期待を抱かないということが挙げられます。まだ起きていない、決定していない未来のことなので、先のことばかりに囚われずに、今、この瞬間に集中することが大切です。

(2)不安感

 より厳密には「失敗不安」とよばれる感情も「あがり」に先行する感情となっています。これは不安感は期待感と同様に、まだ起きていない未来に対する感情です。ただし、期待感とは逆で未来に対する「ネガティブな気持ち」が不安感なのです。何かをやり始める前から「失敗したら、どうしよう」という不安な気持ちを抱いていると、結局、本当に失敗してしまいます。これはパニック症などの精神疾患とも共通するものです。パニック症も、まだ発作が起きていない段階で「もし、発作が起きてしまったら、どうしよう」という気持ちになってしまうことで、本当に動悸や呼吸困難、めまいなどの発作が起きてしまいます。
 「失敗したら、どうしよう」と思うことで、実際に失敗してしまうというのは、あまりにも勿体ないことではないでしょうか。これも期待感と同様で、先のことを考えて不安になるのではなく、今、この瞬間に集中することが重要なのです。

 「今、この瞬間」に集中するのは、日頃からトレーニングをすることも大切です。たとえば、マインドフルネスという心理療法における「レーズン・エクササイズ」という手法があります。この手法は「これが最後の晩餐だと思って」と言われて、レーズン(干しブドウ)を1粒わたされます。そして、このレーズンをよく見て、よく触って、よく匂いを嗅ぎ、口に入れてからもゆっくり噛んで、じっくり味わう、というものです。普段、食事をする際に、ここまで五感をフル活用することはないのではないでしょうか。五感をフルで利用して、対象と関わることで、思考・イメージなどは、しっかりと「今、この瞬間」に留めることができます。
 このエクササイズは、別にレーズンでなければならないわけではありません。重要なのは、五感を活用して、知覚を「今、この瞬間」に留めることができれ、ある程度、時間をかけて「見る」「聞く」「触る」「匂う」「味わう」ことができれば、何でも構わないのです。
 どんな事柄にも多少の期待や不安を感じることは自然なことです。ただ、先走り過ぎて「今、この瞬間」よりも、期待や不安の方が優先されてしまっては本末転倒です。「あがり」も気の持ちようで何とかなる要素が強いので、期待も不安もほどほどに、マインドフルネスなども活用しながら、上手にコントロールすることが重要です。

【3】「あがり」と「他人」との関係

 「あがり」はたった1人で何かをしていても発生しません。誰かに見られている、誰かに聞かれているという状況が前提となるのです。この「他人の存在」が「あがり」の発生に影響を及ぼすのです。自分がどのように他人から見られているのか、という観点は心理学において自己意識(自意識)として研究されており、これが「あがり」とも関係しています。自己意識には以下のような2つの種類があります。

(1)私的自己意識

 私的自己意識とは、自分自身のみが体験・理解できる感情や動機、価値観などに関する意識のことです。この私的自己意識に注意が向いている状態は「今、ここで」にしっかりと集中できている状態です。従って「あがり」が起きにくくなるのは、私的自己意識が優勢の状態なのです。また、私的自己意識に注意が集中しているということは、あまり他人の目を気にせず、しっかりと自分らしく振る舞い、自分の気持ちや価値観などを大事にできているということでもあります。

(2)公的自己意識

 公的自己意識とは、他者から観察可能な外見や表情、振る舞い(ボディ・ランゲージ)などに対する意識のことです。公的自己意識は自分が他者からどう見られているか、どう評価されるのかに深く関係していため、公的自己意識が高い状態は「あがり」が発生しやすいということが判明しています。

【4】まとめ

ここまでに解説してきた「あがり」のメカニズムをまとめると以下のようになります。

① 何かを実際に行う前に、そのことに対する期待感や不安感が過剰だと「あがり」が引き起こされてしまう可能性が高い。期待感と不安感はいずれも、まだ起きていない未来に対する感情なので、先行して考えたり、イメージしたりするのではなく、「今、ここで」に集中することで「あがり」に対処できる。

② 「あがり」は自分が上手にできていない、パフォーマンスが低下・悪化しているということを自覚した瞬間に起こります。上手にできない、パフォーマンスが低下・悪化していると何がマズいかというと、自分のことを誰かが見ていたり、聞いていたりして、評価される状況だからです。他者評価が低いと、評判を落とし、「あの人はダメだ」と思われてしまうかもしれないという考えがよぎります。それがさらなる緊張を生み、パフォーマンスを下げ、結局、事前の失敗不安どおりに、本当に失敗してしまう、という悪循環を生むわけです。この悪循環を断ち切るためには、自己意識を公的ではなく私的な状態に保つことです。他人の目を気にせずに、自分自身の今、この瞬間の感覚に集中させます。これにより、実際にどうなるか分からない他者評価に振り回されることなく、自分自身の本来のパフォーマンスを発揮し、「あがり」から脱却できるのです。

「今、ここで」に集中するという考え方は「あがり」だけではなく、メンタルへルス全般において非常に重要な要素となっています。心理カウンセリングにおいてテーマとなる相談の多くが、「今、ここで」に集中できず、ネガティブな感情に振り回されていることが原因であったりします。ホッとライフの専門家は、皆さんの「こころ」を「今、ここで」に集中させるサポートをしてくれる方々なので、是非、相談してみてください。

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