あがり症とは? ー あがりの心理学 ー

あがり症とは? ー あがりの心理学 ー

あがり症という言葉を耳にすることは比較的多いかと思います。人前では話したり、プレゼンしたりするのが、どうしても苦手であがってしまうという人は多いのではないでしょうか。心理学などの研究において、人前で「全くあがらない」と回答した人は、約3%に過ぎないという結果も出ています。今回は、心理学の観点から「あがり」について解説していきたいと思います。

目次

  1. 心理学における「あがり」とは
  2. 「あがり」やすい性格とは?
  3. 社交不安症 - あがりに関する病気 -
  4. 「あがり」への効果的な対処法
  5. まとめ

【1】心理学における「あがり」とは

「あがり」とは、心理学では、演壇で公演や発表する時やスポーツ等で試合に臨む時などに体験される心身の緊張状態であると定義されています。特にその行動(発表や試合など)の成否が当事者にとって重要なほど、緊張感や不安感が高まり、結果として、目標の達成(上手に話す・試合に勝つなど)が困難になってしまうことが多いとされています。また、「あがり」は生理心理学的な観点からも研究されており、心拍数や血圧の増加が認められることも判明しています。さらに、研究の結果、「あがり」が起きやすい状況としては、スピーチ・発表・演奏・演劇・スポーツ(個人・団体も)・面接・受験・異性との会話・自己紹介・司会進行・音読・人前で転んでしまう、など実に様々な場面があることが分かっています。

【2】「あがり」やすい性格とは?

誰しも人前で「あがって」しまった経験はあるかと思います。ですが「あがりやすい」人と、どんなに多くの人の前に立っても全然緊張しないという人がいるかと思います。では、その違いは何なのでしょうか?これについては、パーソナリティ心理学の観点から、性格傾向と「あがり」の関係について検討されています。Y-G性格検査という医療保険の対象にもなっている代表的なパーソナリティ検査の回答傾向と「あがり」の関連性について検討したところ「あがりやすい人」は、非協調的・攻撃的・主観的・神経質・劣等感・支配性という因子が高いということが判明しています。

【3】社交不安症 - あがりに関する病気 -

人前であがってしまうという現象が日常生活に支障をきたすレベルになってしまうと、それは精神疾患のカテゴリーに入ってしまうことがあります。これは、社交不安症とよばれるものであり、以下のような診断基準があります。

  • あらゆる対人場面に対する過剰な不安と恐怖
  • 他者からのネガティブな評価に対する不安と恐怖
  • 対人場面で常に瞬間的に不安や恐怖を感じてしまう
  • 対人場面を積極的に回避しようとしたり、苦痛を感じながらも必死で耐えたりする
  • 対人場面において、本人が感じている不安や恐怖は現実的なものではない
  • これらの状態が6ヶ月以上継続して存在している

社交不安症のメカニズムの例として、他人に聞かれた時に声が震えている等の判断をされることに対して強い不安を感じてしまい、その結果、話をするのを嫌がる(恥ずかしがる)などがあります。また、社交場面で常に動悸、発汗、胃腸の不快感、下痢、紅潮などの症状を経験し、特に顔が真っ赤になってしまう紅潮は典型的な症状として、多くの社交不安症患者に認められます。さらに、他者との雑談や初対面の他者と会うこと、自分が飲食をしている様子を他者に見られる状況(カフェやレストランなどでの外食)、仕事や学業におけるプレゼンテーションなども強い不安を引き起こす状況であるため、パニック発作が併発してしまうこともあります。
単なる「あがりやすい人」と社交不安症患者の違いは、「あらゆる場面で」という部分と、紅潮以外の身体症状を伴うかどうかという部分です。社交不安症は、日常生活のあらゆる対人場面で強い不安や恐怖を感じることで、学校や会社などでの活動が著しく制限されてしまいます。また、身体症状を伴うことが多いため、常に不健康な状態が続いてしまい、それが嫌で人前に出たくなくなる、という悪循環も生まれてしまいます。

【4】「あがり」への効果的な対処法

(1)一般の人が行っている「あがり対処法」

「あがり」に関する研究では、一般の方々が「あがってしまう」状況に直面した際に、どのような対処を行っているのかを調査しています。その結果、「みんなのあがり対処法」には、以下のようなものがあることが分かりました。

  • 暗示:自分は大丈夫だと言い聞かせる、落ち着けと自分に言い聞かせる、祈るなど
  • 運動:ストレッチ、ジャンプ、体操など
  • イメージ:事前にイメージで準備をしておく、成功した時のことを想像する、「あがった時」のことを予め想像しておくなど
  • 回避:人の目や顔を見ないようにする、早く終わらせるようにする、何も考えないよ
    うにする、ごまかすなど
  • 積極的思考:「あがっている」という状況に慣れようとする、「あがり」を楽しむように努める、人前で何かをする経験を沢山しようとするなど
  • 開き直り:気にしないようにする、あまり考え過ぎないようにする、気楽に考えるよ
    うにするなど
  • 無関係な行動:友達と話す、音楽を聴く、テレビを見る、(無関係な)歌を歌うなど

(2)カウンセリングでも実施される「あがり対処法」

「あがり」への効果的な対処法としては、いくつかの方法があります。1つは呼吸法です。私たちは息を吸うと交感神経が活性化し、息を吐くと副交感神経が活性化します。よく落ち着きを取り戻すために深呼吸をするというのは、実は非常に効果的な方法なのです。ただし、重要なのは副交感神経を優位にするということです。副交感神経はリラックス状態で有意になるものであり、緊張・不安・恐怖とは真逆の状態です。従って、息を吐くことに特に集中する必要があります。ただ、まずは息を吸わなければ吐くこともできないので、ゆっくりと鼻から大きく息を吸い、ゆっくりと口から吐く(特にゆっくりと)、これを何度か繰り返すだけで、副交感神経が優位な状態になります(※息を吸う場合も、吐く場合も5秒以上が目安となります)。
もう一つの方法は、漸進的筋弛緩法とよばれるものです。緊張している状態では、自然と筋肉に力が入ってしまいます。逆に言えば、筋肉の力が抜けている状態はリラックス状態であるといえます。漸進的筋弛緩法は筋肉の力を抜くことで、副交感神経が優位な状態を作り出すリラクゼーション技法であり、以下のような手順で実施します。

  1. 腕を伸ばして両手の親指を中にして握りこぶしを作る。
  2. 力を入れて、筋肉を一旦、緊張状態にする。
  3. 息を吐きながら力を抜き、力が抜けた感覚やリラックスした感覚を味わう。
  4. 息を吸って止め、両肩をすぼめ、一時的に緊張状態にして、その状態を意識する
  5. 息を吐きながら力を抜き、力が抜けた感覚やリラックスした感覚を味わう。
  6. 息を吸って止め、顎を引いて鼻と眉間にシワを寄せ、口をすぼめて目を閉じ、力を入れる。
  7. 息を吐きながら力を抜き、顔の力が抜けた感覚やリラックスした感覚を味わう。

これらの手順は①・②・③が両手、④・⑤が肩、⑥・⑦が顔に関するものであり、全て「一旦、力を入れて、緊張状態を作る」という共通点があります。これは、単に「力を抜いてください」と言われても、私たちはその感覚があまりよく分かりません。そこで、一端、力を入れて、その力を抜くことで「これがリラックス状態なのか!」という感覚を体験することが重要なのです。漸進的筋弛緩法は、上記の手順を1セットとして、1から3セット実施することで、効果的に副交感神経が優位な状態を作り出せます。
呼吸法も漸進的筋弛緩法も、いずれも副交感神経が優位なリラックス状態を作り出すことが目的です。これは、緊張・不安・恐怖とは真逆の状態なので「あがり」を抑制し、平常心で行動することができるようになるわけです。

【5】まとめ

今回は、あがりに関する心理学的な定義、あがりやすい性格、社交不安症、あがりへの効果的な対処法について解説しました。あがりへの対処法については、それほど難しいものではないので、実践的なアプローチであると考えられますので、是非、参考にしていただければと思います。

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