新しいテクノストレス – スマホ依存の心理学 –

新しいテクノストレス – スマホ依存の心理学 –

スマートフォンは既に私たちの生活になくてはならないものになっています。これは、単にスマートフォンが電話としての機能だけではなく、実に多機能なツールとなっているからです。しかし、そんな生活必需品であるスマートフォンに私たちの方が振り回されてしまうことがあります。いわゆる“スマホ依存”とよばれる現象は若い世代を中心に社会問題となっています。では、心理学的な観点から考えると、スマホ依存とはどのように定義できるのでしょうか。

目次

  1. 心理学における依存とは?
  2. スマホ依存の問題(1)新しいテクノストレス
  3. スマホ依存の問題(2) スマホ不眠
  4. スマホ依存の問題(3) 情報処理のキャパオーバー
  5. スマホ依存を解消するには
  6. まとめ

【1】心理学における依存とは?

スマホ依存の“依存”という言葉には聞き覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。一般的によく聞くのはアルコール依存やギャンブル依存、薬物依存などだと思います。では、そもそも依存とは、どのような状況を指すのでしょうか。心理学や精神医学における依存には、耐性と離脱症状という2つの要素があります。

(1)耐性とは?

薬物やアルコール、ニコチン(タバコ)、そしてギャンブルなどもそうですが、ずっと続けて摂取・実施していると、徐々に得られる効果が低下していきます。これを耐性とよびます。耐性ができてくると、それまでと同じように酔うためには、より多くのアルコールが必要になり、それまでと同じように興奮・楽しむためには、よりリスキーなギャンブルをしなければならないという状態になってしまいます。また、耐性は「気持ちが良くなる」「楽しい」などのポジティブな影響を及ぼす事柄だけでなく、ネガティブな事柄でも発生します。たとえば、体罰は問題のある態度や行動を抑制するために実施されますが、体罰を受ける側に耐性ができてしまうと、より強い体罰を与えないと問題が改善されないという状態を引き起こしてしまいます。教育において体罰自体が大きな問題となるのは、このような耐性による悪循環のも1つの要因です。
スマホ依存における耐性とは、利用時間がどんどん長くなってしまうということです。ただし、仕事などでどうしても使う必要があって長時間の利用をする場合、それは耐性(依存)による問題とは厳密に区別されます。仕事ではない、もっと言えば、本来必要がないネット利用やアプリゲームなどに多くの時間を割き、その時間が徐々に長くなっていくという状態がスマホ依存における耐性の問題であると考えられます。

(2)離脱症状

長期間・多量のアルコール、薬物、ニコチンの摂取やギャンブルの実施をしていたものの、それを一旦中止するまたは使用量や実施回数を減らすことによって起きるのが離脱症状です。一般的に依存物質や依存行動をすると得られる感覚や感情と「逆」の症状を示すのが離脱症状です。従って、安心や落ち着き、興奮などが得られていたのであれば、離脱症状によって不安や焦燥、抑うつなどの状態が発生してしまうわけです。そして、このような離脱症状を解消するために、使用・実施を停止していたアルコールやギャンブルなどを再び始めてしまいます。スマホ依存における離脱症状とは、スマートフォンがないと落ち着かない、イライラするなどの状態を指します。

【2】スマホ依存の問題(1)新しいテクノストレス

 スマホ依存には様々な問題がありますが、その1つとして挙げられるのが、テクノストレスという問題です。一般的にテクノストレスとは、コンピュータによる仕事・作業に従事している人が抱えるストレスを指します。テクノストレスは、心身の障害が多発することから「人間とコンピュータとの微妙な関係が崩れた時に起こる病気」として定義されています。
主な症状としては、不安・抑うつなどのメンタル不調、身体各所の痛みや、いわゆる自律神経失調症のような症状などです。コンピュータとスマートフォンでは、大きさや用途が異なりますが、スマホ依存による症状として、やはり目や肩の痛みや、自律神経失調症、不眠などの問題が同様に認められます。コンピュータよりもスマートフォンの方がより深刻なのは、手軽に持ち運べて、多機能であり、いつでも・どこでも・何でもできてしまうため、依存の背景にある長時間利用や利用シチュエーションの拡大してしまうことにあります。
 また、テクノストレスで最近注目されているのが、インターネット依存です。特に世界保健機関(WHO)がゲーム依存症を精神疾患の一種として正式に診断基準をマニュアル化したことにより、大きなニュースにもなりました。スマートフォンの利用の多くを占めるのはインターネット利用とアプリゲームの利用であると考えられます。つまり、インターネット依存とゲーム依存の“合わせ技”ということになります。ゲーム依存症がより深刻なのは、既に世界中で死亡者が複数出ているということです。これらの死亡例は主にオンライン・ゲームに対する強い依存状態が原因となり、PC(デスクトップ型やノート型)で長時間・不眠不休で実施したため、急性心筋梗塞や脳卒中などを発症したことによるものであると報告されています。しかし、今後はPCだけでなく、スマートフォンへの依存から生命にかかわるような大きな問題が発生する可能性も考えられます。

【3】スマホ依存の問題(2) スマホ不眠

 スマホ依存の問題で最もよく耳にするのは不眠に関する問題です。これは交感神経の活性化(興奮)による自律神経の異常という観点から説明することができます。スマートフォンの画面を見ることで、目から光刺激が視神経を通じて、脳に送られます。私たちの脳は目からの刺激を知覚することで、外界の変化に瞬時に対応することができます。逆に目をつぶって何も見ていない状態では、視覚的に外界に変化が起きていないという認識になるので、交感神経は活性化しません。私たちが夜、ぐっすりと眠れるのは、部屋を暗くして目をつぶることで光刺激を遮断し、交感神経を抑制し、逆に副交感神経を活性化することで、リラックスすることができるからです。
 しかし、スマートフォンの画面を見ることで、目から光刺激が供給され続け、交感神経が活性化されて眠れなくなってしまいます。さらに、悪循環として、スマートフォンの画面を見る⇒目が冴える⇒眠れない⇒眠れないからスマートフォンを操作する⇒より目が冴えて眠れなくなる⇒気づくと朝になってしまっている、というような問題の連鎖が起こり、影響が拡大・深刻化することもあります。

【4】スマホ依存の問題(3) 情報処理のキャパオーバー

 スマホ依存の問題の中で意外に分かりにくいが、かなり深刻な問題を引き起こしているのが情報過多による悪影響です。スマートフォンは大量の情報に気軽にアクセスできるツールです。しかし、その情報量はとても1人の人間が適切に処理して活用できるレベルのものではありません。インターネットを利用したり、アプリでゲームをしている際に「今、私は大量の情報を処理しているんだ」と思いながらスマートフォンを操作している人はいないと思います。しかし、実際には目や耳から大量の情報がスマートフォンを通じて流入してきており、どうでもいい情報やちらっと眼に入っただけの情報も「どうでもいいか、どうでもよくないか」や「無視するか、無視しないか」という根本的なレベルで情報を処理しているのです。この情報処理は脳と神経を活性化させます。従って、前述のスマホ不眠の問題も、目からの光刺激の問題と同時に、画面に映った何らかの情報を処理することによる交感神経の活性化という問題も含んでいるのです。どうでもいい情報も無視すればいい情報も全て処理してしまうため、スマホ依存の状態になると常に交感神経が活性化し、毎日、強い疲労感に見舞われるという生活になってしまいます。

【5】スマホ依存を解消するには

 スマートフォンは私たちの生活にとってなくてはならないものであり、既に利用している人にとって「使用をやめる」「解約する」というのは、非現実的であると考えられます。これは、お酒やタバコ、ギャンブルと同じで、問題の無い範囲での利用や日常生活に支障をきたさない範囲での使用であれば、問題が無いというのと同じです。では、どのようにして「必要最低限の利用」に留め、スマホ依存を解消すればいいのでしょうか。

(1)サーカディアンリズムに合わせた利用

 サーカディアンリズム(概日リズム)とは、私たちの心身の時間的リズムのことであり、約24時間周期で繰り返されるものです。脳や神経は、朝になれば交感神経を活性化させて仕事や勉強などの活動の準備状態に入ります。そして、夕方を過ぎて夜になると副交感神経が優位に活性化し、休息・睡眠の準備状態に入ります。これは絶対的な生理的リズムなので逆らうだけ無駄であり、特に自律神経のバランスに逆らうような行動をしても、心身のバランスを崩すだけです。サーカディアンリズムとスマホ依存の関係で言えば、やはり夜間の使用を控えるということが重要です。特に“寝ながらスマホ”の使用は絶対に厳禁であると言えます。スマホを操作している間に、気づいたら眠っていたという経験がある人もいるかもしれませんが、その睡眠は質が悪く、翌朝の活動に悪影響を及ぼします。ベッドに入ったら絶対にスマートフォンを手にしないということが、少なくともスマホ不眠を解消する絶対必要条件であると言えるでしょう。

(2)多機能からの脱却

 スマートフォンには電話というメイン機能以外に、メールやチャット・時計・ネット利用・ゲーム機・地図・読書・音楽聴取など様々です。何をするにもスマートフォンが1台あればいいという状態は、逆に言えば、何をするにもスマートフォンがなければできない、ということでもあります。これが、スマートフォンの利用時間増加・利用シチュエーション拡大のメカニズムなのです。
たとえば、今、何時だろうと思ってスマートフォンを見るとしましょう。目的は時間の確認だけでしたが、画面を見ると「新しいニュースが配信されている」「新しいアプリゲームの配信がスタートした」「友達からメールが来た」など様々な情報が同時に入ってきてしまいます。そのため、時間を確認した流れで、そのまま色々なことを続けざまにやってしまうということがあります。多機能であるがゆえに、必要なことを1つやろうとすると、同時に後回しでもいいことや、重要性の低いことがいくつもいくつも目についてしまい、スマホ依存に陥ってしまうわけです。
そこで「一昔前に戻る」ということを意識すると、スマホ依存から脱却できます。つまり、時間を確認するのにスマホを使わず腕時計を着用する、読書は電子書籍ではなく紙媒体の本、音楽はスマートフォンではなく音楽プレイヤーで聞く、などのように、スマートフォンに集約されていた様々な機能を分散させるのです。これにより、スマートフォンだけに割かれていた大量の時間は分散され、相対的にスマートフォンの使用時間は減少します。ですが、やりたいことを無理矢理我慢しているわけではないので、いわゆる離脱症状なども起きにくくなります。スマートフォンを長時間・継続的に利用するきっかけさえ潰してしまえば、依存を解消することができるわけです。また、画面の明滅という光刺激が減少するだけでも、交感神経を抑制し、リラックスすることができます。寝る前にスマートフォンで電子書籍を読んでいたら不眠になる可能性は高いですが、普通の本を読んでいる分には光刺激も少なく情報処理のスピードも遅いので、不眠になることは少ないと考えられます。

【6】まとめ

今回は、心理学における依存、スマートフォン利用におけるストレスや不眠のメカニズム、スマホ依存を解消する方法について解説しました。その他の依存症と同様に、スマホ依存については学習心理学や生理心理学、行動療法的な観点からのアプローチが効果的です。今回解説した依存の解消法も、より専門的には、学習心理学の知見と生理心理学の知見を組み合わせたものになります。
ホッとライフではこの記事以外の症状や特有の依存状態に対して相談を受け付けております。スマートフォンの利用について悩みを感じているという人は、一度ご連絡を頂けると幸いです。空いた時間にホッとできる場所、ホッとライフ今関にお気軽にお問い合わせください。

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