やりがいとは?内的動機づけ・外的動機づけの心理学

やりがいとは?内的動機づけ・外的動機づけの心理学

充実感・やりがいは心理学的に動機づけ(motivation)として研究されており、どのようにすれば、高めることができるのか、ないとどんな問題が起きるのかが判明しています。

目次

  1. 心理学における「充実感」「やりがい」の定義とは?
  2. 充実感・やりがいがあると、何が良いのか?
  3. 充実感・やりがいが無いと、どんな問題が起きるのか?
  4. 充実感・やりがいを作る・向上させる方法
  5. まとめ

【1】心理学における「充実感」「やりがい」の定義とは?

「充実感」「やりがい」を別の言葉に置き換えると「モチベーション(motivation)」になるかと思います。これは日本語に訳すと「動機づけ」であり、私たちがあらゆる行動を実施する際の背後にあって、私たちを突き動かしている要因です。基本的に、私たちは何をするにも動機がなければできないし、逆に他者が何かをしていたら「なぜ、やっているんですか?」というように、その動機が気になるはずです。これは犯罪ですら「犯行の動機は?」という観点が重視されることからも分かるかと思います。では、学術的な観点から、動機づけとは、どのようなものなのでしょうか。

動機づけ

心理学において、動機づけとは行動の理由を考える時に用いられる基本的な概念であり、行動を一定の方向に向けて生起させ、持続させる過程や機能の全般を指す用語です。私たちは行動をする際に、何らかの要求・欲求を持っており、同時に要求・欲求の対象である誘因が存在する時に行動が発生すると考えられています。さらに、要求・欲求と誘因が出会うことによって発生し、行動の直接的な推進力となる動因というものもあります。つまり、動機づけ(充実感・やりがい)というものは、誘因というきっかけがあって、それが要求・欲求を充足してくれるものである時に、何らかの行動を起こそうという動因が生じる、という流れです。

【2】充実感・やりがいがあると、何が良いのか?

要求や欲求があるということは、現時点で、何かが満たされていない・充実していないということでもあります。何らかの行動を実施する理由は「満足を得るため」や充実感を得るため」でもあります。より根本的なところでは、動機づけには「生きていくため」という側面もあります。生理心理学的・学習心理学的な観点からすると、身体内部におけるバランスが失われた際に、そのバランスを回復させるために、私たちは行動を起こすのであるという考え方があります。お腹が空いたから何かを食べるというのも、喉が渇いたから何かを飲むというのも、全て「生きていたい」という動機づけによるものなのです。これが根本にあり、そこからステップアップする形で様々な要求・欲求を充実させるようとするのが、私たちのライフスタイル・人生の基本なのです。

マズローの欲求階層

心理学者のマズローはこのようなステップアップを欲求階層説として、以下のように理論化しています。

  ① 生理的欲求:食欲や睡眠欲を充実させたいという欲求の段階

  ② 安全欲求:安心して生活したいという欲求の段階

  ③ 所属と愛情の欲求:仲間を欲しい、友人や恋人を作りたいという欲求

  ④ 承認欲求:仲間から認められたい、褒められたい・賞賛されたいという欲求

  ⑤ 自己実現:自分が本当にしたいこと・成し遂げたいことに対する欲求

 ①と②の欲求段階は「生きたい」という動機づけに基づくものであり、まずはこれが充実していないと、いわゆる「やりがい」が必要になるような仕事や勉強などのステップに上がっていくことはできません。その日、食べる物にも事欠き、安心して眠るための場所が確保できていないのに「一生懸命、勉強しよう」とか「仕事で成果を上げよう」とは思えないはずです。生理的欲求と安全欲求が充実してはじめて、私たちは「やりがい」を求め始めるのです。
 所属と愛情の欲求、承認欲求を充実させるためには、私たちは「他人と共に何かをする」もしくは「他人に認められる為に何かをする」ということが必要になります。つまり、「やりがい」とは「他人の役に立ちたい」とか「褒められたい」「評価されたい」というものであるといえます。
 そして、その先にあるのが自己実現です。これは人生の最終目標のようなものであり、他人に認められ、賞賛・評価された人のみがたどり着ける境地であるといえます。これこそ、最大の充実感の獲得であるといえるでしょう。

様々な「やりがい」の形

 「充実感」「やりがい」とは1つの形で示せるものではなく、ケースバイケースで様々な“カタチ”を持ちます。他人に認められたいという気持ちも「やりがい」であり、自分の夢を実現させたいという気持ちも「やりがい」なのです。人生における夢や目標を充実させる原動力が「やりがり」なのですが、これを達成するためには他者の協力が不可欠です。そのため、1つ前のステップで他者からの賞賛や承認を得なければ、個人的な夢や目標は達成できないわけです。そして、人生上の大きな目標を達成するためには、日々の小さな事柄にも「やりがい」を持って進めていくことが必要なのです。

【3】充実感・やりがいが無いと、どんな問題が起きるのか?

 「充実感」「やりがい」が無い、ということは明確な動機づけが無い状態で物事を進めるということになります。モチベーションが低くても、物事を進めることはできるかもしれませんが、その過程で様々な問題が起きてしまいます。
 ① 時間がかかる:明確な動機づけがないということは、物事を進めるスピードを低下させてしまいます。
② ミスが多くなる:明確な動機づけがないということは、集中する必要がないということになります。そのため、不注意によるケアレスミスが多くなります。
 ③ 無責任になる:明確な動機づけがないということは、成功しても失敗しても自分にはあまり関係ないということでもあります。そのため、責任の所在が曖昧になり、無責任な態度をとってしまいがちになります。
 ④ 他者とのコミュニケーションの希薄化:明確な動機づけがないということは、誰かに相談してまで実行すべきものではないということになりがちです。そのため、慎重さを欠いた独善的な行動が増えてしまいます。
 「充実感」「やりがい」が無いというだけで、このような様々な問題が発生しやすくなります。さらに問題なのは、1つ「やりがい」を見いだせない事柄があったせいで、他者からの信用を失ったり、グループの中で孤立するきっかけになってしまうこともあるわけです。

【4】充実感・やりがいを作る・向上させる方法

 「充実感」「やりがい」を作り出し、向上させるためには、いくつかの方法があります。

(1)内発的動機づけを高める

 内発的動機づけとは、私たちの「内側」から発生する「やりがい」です。ただし、生命維持に関わるようなものとは少し異なります。例えば「お腹が空いたから、何かを食べる」というのは「充実感を得たいからやっている」というものではなく、そうしないと極端な話、死んでしまうからです。内発的動機づけは「映画が見たいから、映画を見る」や「野球がしたいから、野球をする」のように、行動そのものが誘因となるような動機づけのことを指します。従って、内発的動機づけは、好奇心・挑戦したいという欲求・最後までやり遂げたいという欲求・もっと上手くなりたいという欲求などです。
 仕事や勉強でも、単に「やらなければならないから」というところからシフトし、好奇心や挑戦心などを持って取り組むことで、内発的動機づけが高まり、パフォーマンスも上がります。これにより、目標の達成による充実感を得やすくなります。

(2)外発的動機づけを高める

 外発的動機づけとは、私たちの「外側」から発生する「やりがい」です。最も分かり易いのは「お金」です。何らかの報酬が「外から与えられる」から、仕事や勉強を頑張れる、というのが外発的動機づけです。仕事の場合は、月々の給与というものが設定されており、その支払額や支払い期日は、自分がコントロールできるものではありません。そこで、外発的動機づけを高めるために、自分自身への「ご褒美」を設定するという方法があります。これにより、充実感や達成感を自分の意志である程度コントロールしながら、物事を進めていくことができます。
 1つ注意しなければならないのが、アンダーマイニング効果とよばれる現象です。これは、元々、内発的動機づけによって支えられていた行動に、後から外発的動機づけが付け加えられることで、動機づけが潰し合ってしまうというものです。例えば、ボランティアでの清掃活動には「街を綺麗にしたい」という内発的動機づけで支えられていた部分が強かったにも関わらず、良かれと思って主催者がアルバイト代を支給してしまうと、外発的動機づけによって、内発的動機づけが潰されてしまい、清掃活動の参加者が減ってしまうということなどが該当します。「やりがい」や「充実感」を得るためには、自分の内側から湧き上がってくるものと、外から与えられるものを、上手に使い分けることが必要なのです。

【5】まとめ

今回は、心理学的な観点から「充実感」「やりがい」について、動機づけという観点から解説しました。「充実感」「やりがい」があることのメリット、ないことのデメリット、動機づけが内側・外側のどちらから発生するのか、などについてお伝えしましたが、これは自分自身である程度コントロール可能なので、上手に内外の動機づけを操作することができれば、より充実した生活を送ることができるでしょう。

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