うつ病、こころの不調の最前線

うつ病、こころの不調の最前線

 うつ病という言葉は非常に有名かつ、様々な場面で耳にする言葉になっているかと思います。しかし、学術的に正確な定義ではない一般論的な知識が広まり、誤解を生んでいるケースもあります。そこで、今回は心理学・精神医学の観点から、うつ病について解説してみたいと思います。

目次

  1. うつ病の正確な定義とは?
  2. うつ病の予兆・サインとは?
  3. それは「うつ病ではない」 – 似ている別の病気 –
  4. うつ病の治療・支援
  5. まとめ

【1】うつ病の正確な定義とは?

うつ病には明確な診断基準がありますが、あまりにも「うつ病」という言葉自体が有名になってしまったために、本来の正確な規準・定義がおざなりにされる傾向があります。以下に示すのが、いわゆる抑うつエピソードとよばれる、うつ病に関する学術的な診断基準です。

 ◆ 以下の9つの症状のうち、5つ以上が【2週間以上】継続している。
 ◆ なお、①~⑨の症状のうち、①もしくは②は必ず発症している。
  ① 抑うつ(落ち込んだ状態)
  ② 興味の減退
  ③ 異常な体重(食欲)増減
  ④ 不眠または過眠
  ⑤ 精神運動焦燥または制止(意味もなく焦る、やることがあるのにぼぅーとする)
  ⑥ 疲労感
  ⑦ 罪責感(何でも自分が悪いと思う)・無価値観
  ⑧ 思考・集中・決定の困難
  ⑨ 希死念慮(死にたいという気持ち、自殺に関する考え)

上記のような症状が単発で終わる場合は単一エピソードとよばれます。しかし、多くのうつ病患者は、うつ病の期間⇒比較的健康な期間⇒うつ病の期間、というように発症と抑制を繰り返す反復エピソードを示すことが判明しています。

【2】うつ病の予兆・サインとは?

 うつ病は一度発症してしまうと、反復エピソードに陥りやすく、なかなか「完全治癒」が難しいという側面があります。そのため、予防や再発防止が非常に重要なテーマとなっています。特に予防は「重症化の予防」がポイントになります。どんなに優秀な医師や心理カウンセラーでも、重症のうつ病患者の症状を改善させるのには多くの時間と労力を要します。なので、早期発見・早期治療が大切なのです。以下に挙げるような事柄への“気づき”があったら、それはうつ病の予兆・サインかもしれません。

 ① 明確な理由を伴わない不眠(寝つきが悪い・途中で起きるなど)
 ② 普段は楽しいと思う事柄が、あまり楽しいと思えない
 ③ 物忘れが多くなった
 ④ 最近、大きく生活環境が変わり、慣れないことが多い(例:引っ越しや結婚など)

 これらの事柄に身に覚えがあるからといって、即、病院へ、というものではありません。しかし、これらがきっかけとなって、本格的なうつ病へと繋がっていく可能性があります。上記のような“気づき”がある人は、まずはしっかりと休息をとることが重要です。不眠の症状があるからといって、夜更かしをするなどのライフスタイルを変更してしまうと、それをきっかけに不眠障害などの悪循環が発生することもあります。3食きちんんと食事をする(特に夕食は抜かない)、シャワーではなく、ゆっくりとお風呂に入る、しっかりと休息をとり寝つきが悪かったとしても夜間に睡眠以外の行動はしないようにする、などの、いわゆる「規則正しい生活」でストレスの少ないライフスタイルを維持することが大切です。

【3】それは「うつ病ではない」 – 似ている別の病気 –

 うつ病の診断基準となる症状は、日常生活で誰しもが経験する可能性のあるものです。また、他の疾患においても共通する症状が多く含まれています。そのため、一般の方はおろか、専門家である医師でも、別の病気をうつ病と勘違いしてしまうこともあります。以下に示すものは一部ではありますが、うつ病と間違われやすい疾患です。

(1)更年期障害

 更年期障害は、卵巣の機能の衰えや停止によって、女性ホルモンであるエストロゲンやプロエストロゲンの欠乏し、脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンが過剰分泌されることによって起きる疾患です。更年期障害には身体症状と精神症状が認められますが、精神症状は抑うつ・不眠・不安・イライラ・不定愁訴などが挙げられます。特に抑うつは非常に多く認められるため、不眠などの症状と合わせて、うつ病に非常によく似ていると感じられてしまいます。しかし、重要なのは身体症状として、のぼせと発汗(ホットフラッシュ)・動悸・めまい・脈の乱れ・手足の冷え・耳鳴り・頭痛・肩こり・腰痛・疲労倦怠感・頻尿などがあり、これは、うつ病では発生しない症状が多く含まれています。
 更年期障害はこのような特徴的な身体症状に加え、ある一定以上の年齢の女性が発症しやすいという区分もあるので、うつ病とは厳密な鑑別が可能です。しかし、誤診がないわけではなく、その場合、本来はホルモンバランスを整える薬を処方すべきところを、抗うつ薬を処方されてしまう、という問題が発生することもあります。

(2)適応障害

 産業場面において、休職・離職との関連でうつ病がキーワードとなることが多いですが、どうように取り上げられることが多いのが適応障害です。適応障害は以下のような診断基準があります。

 ◆ 明確なストレス要因(※死別を除く)の発生から3ヶ月以内に、抑うつや不安などの感情に関する症状、仕事や勉強のパフォーマンス低下や欠勤・不登校などの行動に関する症状が発生する。ただし、ストレス要因が消え去ったり、環境が変化したりした後、6ヶ月以上症状が持続することはない。

 適応障害にも、やはり「抑うつ」という症状が認められ、加えて、仕事や勉強などへの悪影響が発生するため、一見すると、うつ病と非常によく似ているように感じられます。しかし、適応障害はどちらかというと心的外傷後ストレス障害(PTSD)と同じカテゴリーの精神疾患であり、明確に「これが原因だ」という出来事や経験・周囲の環境などが特定可能です。従って、前述のように「ストレス要因が消えたり、環境が変わった後に、6ヶ月以上は継続しない」ということが大前提になります。ですが、うつ病は「原因はたった1つで、それさえ何とかなれば治る」というものではなく、複合的な要因によるものであることが多いです。そのため、仕事や学校などの環境を変えたら半年で治る、というわけではないのです。

(3)「新型うつ病」

 “うつ病”と入っていますが、似て非なるものが「新型うつ病」です。あえて「 」で表現しているのは「新型うつ病」という病気は正式には存在せず、精神科や心療内科で「あなたは新型うつ病です」と診断されることはないからです。「新型うつ病」の特徴として、若者に多く、抑うつはあまり認めらないが疲労感や倦怠感が強い、ストレスの原因を積極的に避けようとする、自分ではなく他者や所属先を責める、休日や趣味・遊びの場合は症状が治まり活発に活動する、などがあります。
「新型うつ病」の背景として、診断されるレベルに達していない程度の軽度の神経発達症(発達障害)やパーソナリティ障害などにおける潜在的な問題が、就職・進学などのきっかけによって表面化したことが原因ではないかとも考えられています。学生の時よりも、就職後の方がコミュニケーションは複雑になります。その結果、それまではあまり大きな問題にはならずに済んでいた社会的・対人的な問題が顕在化する可能性が高まります。しかし、当事者からすると、自分は子どもの頃から全く変わっていないのに、就職した途端に急についていけなくなった、周囲との間に溝が生まれたと感じてしまいます。そのため、自分に問題があるのではなく「周りが悪い」と感じてしまうのです(うつ病は自分が悪いと感じる罪責感が顕著です)。休日や趣味・遊びの際には一転して元気になるのは、そんな自分の現状を分かってくれている他者とだけ過ごすので、比較的、気楽でストレスの少ない状態で過ごせるからだと考えられます(うつ病は2週間以上続くことが前提であり、休日だけ症状が軽くなる・治るということはありません)。
”大人の発達障害と新型うつに関する記事はこちら
大人の発達障害との付き合い方

【4】うつ病の治療・支援

 うつ病は「感情の病気」と思われがちですが、より重要なのは「認知の病気」であるという側面です。抑うつなどの感情は、その前の「物事の捉え方・考え方」によって八セするものです。うつ病のクライエントは、物事の捉え方・考え方が極端になっており、ネガティブ思考からのネガティブ感情という悪循環から抜け出せなくなってしまします。そこで、認知へのアプローチで「悪いとことは元から絶つ」という方法が有効です。
 しかし、自分で自分の考えが歪んでいるということに気づくのは難しいです。そこで、カウンセリングによって「専門家と話をする」ということが重要になります。全ての心理カウンセラーは、心理学者でなければならない、というのが心理カウンセラーの世界基準です。心理カウンセラーは、あなたが気づかない認知や感情の問題に対して、科学的な視点からアプローチしてくれます。対面で直接カウンセリングを受けることも効果的ですが、時間がなくて、それが難しいという場合は、ホッとライフのようにオンライン・カウンセリングも有効な治療・支援の手段です。特にLINEのようなチャット形式のオンライン・カウンセリングは、文字のみで自分の状態を心理カウンセラーに伝えなければならないので、論理的な思考が必要になります。実はこの論理的な思考がネガティブ感情に振り回される状態を防ぐために重要なキーワードになるため、オンライン・カウンセリングで相談をするということ自体が、うつ病の改善に効果的な一歩となるのです。

【5】まとめ

今回は心理学・精神医学の観点から、うつ病の正確な診断基準、うつ病の予兆・サイン、うつ病と似ている病気、うつ病の治療・支援の方法について解説してきました。ホッとライフにおけるオンライン・カウンセリングのサービスや、うつ病をはじめとする精神疾患やメンタルへルスの問題を早期の段階で改善することに寄与するものですので、自身で「こころの不調」に対する“気づき”を抱えている方は、お気軽にご相談いただければと思います。

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