「心配」の正体とそのコントロール方法

「心配」の正体とそのコントロール方法

 「心配」という感情は人間にとって基本的な感情であると同時に、私たちの生活に様々な支障を生じさせる原因にもなります。研究の結果、心配を抱いている状態では、記憶力が低下し、判断を誤り易くなり、あらゆる事柄を実行するのに長い時間を要するようになるということが判明しています。また、心配という感情は交感神経を活性させるので、心配性だと四六時中、張り詰めた意識で過ごさねばならず、ストレスと疲労が強くなってしまい、メンタルへルス的にも様々な問題を引き起こします。そこで、今回は「心配」という感情について、心理学的に解説するとともに、その効果的な対処法についてもお伝えしたいと思います。

目次

  1. 心理学における「心配性」とは?
  2. 心配性は病気? – 精神疾患と心配性の関係 –
  3. 他人への心配 – 「家族」や「家族の将来」が心配 –
  4. 心配な気持ちをコントロールする方法
  5. まとめ

【1】心理学における「心配性」とは?

「私たちは正体の分からないモノに対して、緊張や恐怖を感じてしまいます。まずは正しく理解し、正体を掴むことからスタートするのが肝心です。まずは「心配性」とは、より専門的にはどのような感情なのかを理解していくと良いでしょう。
 心理学における心配の定義は「自分を脅かす可能性のある破局や危険を漠然と予想することに伴う不快な気分のこと」となっています。また、心配が特定の何かにピッタリと焦点が合い、対象が明確になった場合は、その感情は心配ではなく恐怖とよばれるようになります。つまり、心配には「分からない部分が多い」という要素が強いわけです(しっかりと「分かった」状態は“恐怖”となります)。また「予想」というのも重要なキーワードになります。心配とは未来に関する感情であり、過去や現在に関する感情ではないのです。今、この瞬間、何かに対して「心配」しているとすると、それは「分からないことが多いから」か「まだ起きていない、これから起こることだから」なのです。
 心配という感情が厄介なのは、具体的に何かをする前に発生するという点です。結果として、心配していたことが現実になってしまうというケースが多いのは、心配という感情が緊張やストレスを生み、「これからやろうとしていること」に悪影響を与え、失敗へと導いてしまうからなのです。

【2】心配性は病気? – 精神疾患と心配性の関係 –

 いわゆる「心配性」は病気ではありませんが、心配という感情が主な症状となる精神疾患があります。前述の通り、これらの精神疾患は「何かをする前」に心配が先立ってしまい、生活に支障が生じたり、場合によっては何らかの身体症状を伴う場合もあります。

(1)全般不安症

 心配や不安をありとあらゆる事柄に対して感じてしまうのが全般不安症であり、以下のような診断基準があります。

■ あらゆる活動に対する過剰な不安・心配が6ヶ月以上持続
■ 本人が不安・心配のコントロールが困難だと認識している
■ 具体的に以下のような症状のうち、3つ以上が当てはまる

① 落ち着きのなさ
② 疲れやすさ
③ 集中力欠如・空虚感
④ 易怒性(怒りっぽい)
⑤ 筋肉の緊張状態
⑥ 睡眠障害

(2)パニック症

  心配や不安という感情がダイレクトに身体症状として現れるのがパニック症であり、以下のような診断基準があります。

■ 以下のようなパニック発作のうち、4つ以上を発症している

① 動悸
② 発汗
③ 震え
④ 息切れ・息苦しさ
⑤ 窒息感
⑥ 胸痛・胸部不快感
⑦ 吐気・腹部不快感
⑧ めまい・ふらつき・気が遠くなる
⑨ 寒気・熱っぽさ
⑩ 麻痺・うずき
⑪ 現実感の消失
⑫ コントロール不能感
⑬ 死への恐怖

  また、これらの発作について、“発作を起こしてしまうかもしれない”という強い心配(予期不安)を常に持っていることも基準となります。

 全般不安症もパニック症も発症するきっかけが“些細な事”であるケースも多く認めら
れます。つまり、単なる“心配性”くらいのレベルのものが、ストレスなどの影響により、
ある日を境に様々な症状を伴う精神疾患となってしまうこともあるのです。

【3】他人への心配 – 「家族」や「家族の将来」が心配 –

心配という感情は自分だけに向けられたものではありません。「子どもが学校でちゃんと過ごしているか心配」や「離れて暮らしている高齢の親が心配」などのように、他人のことを心配するということも多いと思われます。いわゆる心配性や全般不安症、パニック症の場合、自分以外の他人に対しても、過剰に心配を抱いてしまう傾向があります。
心配という感情は「分からないことが多い」という状況において発生するものです。従って、自分が目で見て確認できない状況で、家族がどんな風に過ごしているのかが分からない、という場合に、心配が募ることが多いわけです。また、心配は「未来の感情」でもあるため、家族の将来に対する心配も多いのではないでしょうか。これが赤の他人なら、心配することもないかもしれません。しかし、家族である以上、何らかの関係性があるにもかかわらず、自分のあずかり知らない部分が多く、ただ心配することしかできない、という状況に陥ってしまうわけです。家族の将来が心配だという場合、「将来、何が起きるか分からないから心配」という要素と「自分が分からない部分が多いので心配」という二重の心配によって構成されるため、より“重い”ものになってしまいやすいわけです。
子どもが学校に通うような年齢になると、1日の約半分は親とは別の時間を過ごすことになります。また、大学入学や就職のタイミングで一人暮らしをスタートさせれば、子どもと時間・空間を共有するタイミングは極端に少なくなります。このように、家族のライフスタイルが変化すれば、その分、“心配の種”も増えるようになります。そして、こういったことがきっかけとなって、全般不安症やパニック症などを発症する可能性もあるのです。

【4】心配な気持ちをコントロールする方法

 何とも厄介な心配という感情ですが、これを上手くコントロールするには、どうすれば良いのでしょうか。心理カウンセリングの現場において、心配という感情を主訴とするカウンセリングを受けるクライエントも多く存在します。そこで、心理学・精神医学には、心配という感情をコントロールする方法が研究されています。

(1)「今、ここで」に集中する

 心配は「まだ分からない未来」や「実際にどうしているか分からない他人」に対する感情であり、予想によって成り立っているものです。従って、思考やイメージなどが「今、この瞬間」から勝手に離れてしまうことを防ぐことができれば、心配は軽減することができるようになります。より具体的には、マインドフルネスという心理療法における「レーズン・エクササイズ」という手法があります。この手法は「これが最後の晩餐だと思って」と言われて、レーズン(干しブドウ)を1粒わたされます。そして、このレーズンをよく見て、よく触って、よく匂いを嗅ぎ、口に入れてからもゆっくり噛んで、じっくり味わう、というものです。普段、食事をする際に、ここまで五感をフル活用することはないのではないでしょうか。五感をフルで利用して、対象と関わることで、思考・イメージなどは、しっかりと「今、この瞬間」に留めることができます。
 このエクササイズは、別にレーズンでなければならないわけではありません。重要なのは、五感を活用して、知覚を「今、この瞬間」に留めることができれ、ある程度、時間をかけて「見る」「聞く」「触る」「匂う」「味わう」ことができれば、何でも構わないのです。
 心配という感情は、「今、この瞬間」から離れて、勝手に予測を広げ、その予測がさらなる心配を生むという悪循環の要素があります。まずは、「今、この瞬間」に自分をしっかり留めるというトレーニングすることで、たとえ心配を感じても、それを自分でコントロールできるようになります。

(2)行動化する

 心配性の方にありがちなのが、やる前は心配で心配でしょうがなかったが、実際にやってみたら何でもなかった、いわゆる“杞憂”や“取り越し苦労”です。これを解消する為には、心配しているという感情優先の状態から、行動優先の状態に切り替えることが重要です。これは、認知行動療法におけるエクスポージャーという手法です。エクスポージャーとは“暴露”という意味であり、現実に曝す、経験させるという意味です。心配しているだけで、行動に移さない限りは、いつまでたっても心配という感情優先の状態から抜け出せません。
 行動にも色々な種類がありますが、心配を解消するつもりで実行しても、逆効果になってしまうものがあるので注意が必要です。それは「調べる」という行動です。心配性の人ほど、色々なことを事前に調べる“クセ”があるという人も多いでしょう。しかし、明日の訪問先への電車の路線と最寄り駅の出口を調べておくというような「確実な正解」があるような場合は問題ないですが、大量に様々な情報が溢れていて「正解」が分からないような事柄について調べるという行動は、逆に心配を増加させてしまうことがあります。
 自分以外の他人、たとえば家族のことが心配、または、家族の将来が心配、という場合に、直接本人とコミュニケーションを取らずに、ネットで色々と調べる等の行動は、現実の問題から剥離すると同時に、より心配を高めることになります。従って、家族の将来などに対する心配を低減させるためのベストな行動は、家族本人としっかりとコミュニケーションを取るという行動なのです。これにより、少なくとも「自分が分からない部分が多いので心配」という部分が大きく解消されることになります。

【5】まとめ

 今回は心配という感情について心理学的に解説するとともに、心配のコントロール方法や改善方法について解説しました。実は「今、この瞬間」に思考や意識を留めることと、感情優先から行動に切り替えることも同時に実行する方法があります。それは、心理カウンセラーなどの専門家に相談するということです。相談するということは、専門家にしかりと自分の現状を伝えるということに意識が集中するので「今、この瞬間」にしっかりと軸足を置くことができます。そして、相談するということ自体が1つの「行動」なので、ただ心配という気持ちを抱えているだけの段階から抜け出すことができます。家族のことが心配である場合、家族本人とコミュニケーションを取ることがベストですが、その前に一度、専門家に相談してみるという“助走”をつけてみるのも良いのではないでしょうか。ホッとライフでは、心理カウンセラー等の専門家が科学的な根拠に基づいて対応しますので、是非、「今、この瞬間」に集中し、行動化のきっかけとして、利用してみていただければと思います。

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